ただ愛する仲 Ⅳ【Hikaru.I】 (ページ32)

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A side

私よりつらい人が慰めてくれる。
…なら彼は？

誰しも自らを閉じ込める殻を持つ。

『…ただいま』

帰ってきた時、母は寝ていた。
私もお風呂に入ってベッドに倒れ込む。

おかしいよね、誰も閉じ込めてないのに
自ら殻に封じ込めるなんて。

何で出られないのだろう。

結局あまり寝付けずに、アラームが鳴ってしまった。

『…大介、頼みがある』

大「あさはやくからなんだよぅ…」

『ここにある農園、お父さんのものでしょ？
　ここに行ってもいい？木が欲しくて。』

大「ぜ〜んぜんいいよぉ、でもなんでいきなり？」

『…追悼公園のため』

朝早くから彼の家に行って、木の要求。
まだ話していなかった仕事内容も話してしまった。

大「……追悼公園の仕事してんの？」

『うん。』

大「うわぁ…すげえじゃん！
　でも被害者…いや、生存者だって知ってて
　その仕事任されてんの？」

『そう、でもだからこそなんだよ』

彼は生き残ったことは凄いことだ、と
被害者なんて言葉を好まない。

そういうところも、人が彼を好きになる理由だ。
あの女の子みたいに。

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