ただ愛する仲 Ⅳ【Hikaru.I】 (ページ3)

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…居ない。

照の家に訪ねても、彼は居なかった。

「いつの間にか居なくなってたのよ」

康「おばあちゃんの店にもおらんかった」

電話ももちろん繋がらない。
どうしてこうも、すぐに居なくなるのか。

あのマリさんなる知っているかも、と思って
お昼時、クラブに足を運ぶ。

マ「ふふ、あんなんでへこたれる子じゃないわ」

『でも、どこにも居ないんです！
　変な気を起こしたら…』

マ「あの子を、舐めないほうがいい。」

そして話し始めた昔話。

それは10年前にまで遡った。

マリさんは暴力男に死ぬほど殴られて、外に逃げた。
通行人はただ、見ているだけ。

「悪女だ」という男の言葉だけを信じて。

自分はこのまま死ぬ、と思っていた所に
助けに助けに来たのが…

『それが、照…』

マ「男の子が震えながら声をあげたの、
　 “もう殴らないで”ってね。」

手に石を持って
「続けるなら、俺もおじさんを殴る」と。

大きな男を相手に負けるに決まってる。

マ「結局ボコボコに殴られたわ〜！」

『…笑うことですか』

マ「私にはいい思い出なの。
　殴られ続けても石を離さなかった。
　殴れもしないのに何で石を持っていたのか、
　それを聞いたの。」

“怖かったんです”、そう言ったそうだ。
逃げたくても放っておけない彼は今でもそう。

マ「そういう子よ。
　変な気なんか起こさない。」

信じて待つしか無い、そう悟った。

前に2人で寝落ちをした公園のベンチに座って
大介に電話をかけると、〈待ってたよ〉なんて。

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