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照と落ち合って、遺族の元をまわる。
『次の方、遺体は未回収だって。
奥さんと息子さんが居る、…ここだ』
照「…でかいな」
かなり大きくて綺麗な外見の家。
『…私って最低だ。
いい家に住んでるからほっとしてる』
照「じゃあ俺も同じ、最低だな」
チャイムを鳴らすと、快く受け入れてくれた。
「…新しい父親を実父だと思ってます。」
『そうなんですね…まず資料を、』
「いいえ、私が口を出せる問題じゃありません。」
照「…他にご家族は？」
「私からは連絡も取ってなくて…ひどいですか？」
『いえ、会ってくださり感謝してます！』
こういう方もいるんだ、と新たに勉強になった。
帰ろうと2人で立ち上がる。
「あの場所…工事中なんですって？
本当に居なくなるのね。
何だか…死んだというよりどこかに行った
なんていう気分よ…。」
骨の欠片さえ見つからなかったというご主人は
今もあの場所に居る、ということになる。
「答えが出ないから忘れたいんです。
記憶がなければつらくもありません。」
照「…じゃあ、資料は」
「ちょっとまって、」
1番下にあったご主人の写真付きデータ。
「はぁ…こんな顔だったわ。
つらい記憶も、幸せな記思い出も失った。」
涙ながらに資料を見つめる奥さんに
なんと声をかけるのが正解だったのだろうか。
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『貴方は…忘れたいのにこの仕事はつらくない？』
照「っは、他人事みたいな。お前は？」
『…分かんない。これが正しいのかどうか。』
照「正解なんてないだろ、
俺たちに出来ることをやるしかない。」
すっと手を差し出されるから手を重ねる。
照「会社戻んだろ？」
天気は良いけど寒空の下、
2人でバスを待つ。
照「…タクシー拾おうぜ」
『渋滞するもん。
バスならここから1本だし』
照「だったらもっと厚着で来いよ…」
彼は優しいから、ほら。
『脱がなくていいよ！寒いでしょ？
照が寒くなるのは嫌』
照「…分かった、こうしよう」
後ろからすっぽり抱きしめられる。
ジャンパーと体温に包まれて暖かい。
私の頭に顎を乗せてくる。
『重い！』
照「いいじゃん、めっちゃいい匂い
…付き合うってこういう感じなんだな」
『…いいね』
2人で恥じらいを隠しながら笑った。
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作者名：あんむ（みし）
| 作成日時：2021年10月9日 23時
