ただ愛する仲 Ⅱ【Hikaru.I】 (ページ23)

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A side

…電話より直接のほうが、と。
けれどこんなに治安が悪いとは知らなかった。

そこまで辿り着くまで長くて…
住所の欄にはここのクラブが書いてあった。

『すいません、岩本照という人は…』

「知りません」

中に居た男の人に聞いても知らない。
酔っ払ったお客ばかり。

男の人が覆いかぶさってくる直前にあのパーカーの匂いが。

照「カネはあんのか？」

『…ない』

照「だったら出よう」

手を引っ張られて着いたのはおでん屋さん。

『…あそこが家？』

照「いや、」

『でも住所が…ならどこ？』

照「また質問ですかお嬢さん。黙って酒でも飲めよ」

『飲みに来たんじゃない、謝りに来たの。
　 “何食わぬ顔で人の不幸を聞き出そうとする”
　 …その通りだった。ごめんなさい。』

1杯のお酒に頼って彼に謝った。

照「はぁ…、くだらないから」

『え？』

照「壊した理由だよ。
　石に名前を刻んだくらいで“犠牲者を忘れない”？
　そんなのくだらない、ムカついたから壊した。」

やっぱり私と同じ気持ちだった。

『よくやったよ、最高』

照「っは、ありがと。じゃあ俺からも1つ聞く。
　何でそんな事が気になった？」

『あー、…ところでハスキーシガレットって？』

照「はぐらかすのかよ、知らないんだろ？」

『分かるよ、グループでしょ？』

照「…ただの歌手グループじゃない」

一瞬、言葉に詰まってから何故か流暢に語り始める。

照「め、ちゃくちゃ歌が上手い。心に刺さる。」

もう少し近くに僕の方に

君に出会ったのは絶対に偶然ではない

『う、うるさいうるさい！！』

大ボリュームでいきなり歌い始めるのは
怖いから辞めてほしかった。

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