ネージュに染まれseason3 (ページ8)

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握って掴んで深澤side ページ8

『待てってストップストップはい止まれもう』

玄関から飛び出してきたAは寒くなってきたのに上着も持たずに鞄だけ手に持ってたんだ

涙を流しながらさ

全然止まってくれなくてふたつめの交差点の信号でやっと捕まえた

『Aほら上着着て』

俺の革ジャンをかければAは鼻をすすり視線をゆっくり合わしたんだ

「ごめんふっか」

『ん、Aちょっと話そう』

「....ん」

喫茶店に入ればAは煙草をくわえてため息をついた

「翔太は何にも悪くない」

不安定になると煙草吸うんだとか

なんか君の新しい一面を知れたみたいで

『じゃあなんで泣いてたの？』

優しく声を出した俺にAは眉を下げたんだ

「撃ち抜かれたから」

『え？』

「翔太に撃ち抜かれたからだよ
翔太の言ってたことは全部核心ついてるからさ」

多分君はあまりにも脆くてあまりにも弱いことを自分が一番知っているんだね

『自分が一番分かってるんじゃん』

「痛いくらいね」

『ならさ...』

次の言葉を出せなかったのはAの目がいつにも増して真剣で真っ直ぐだったから

「愛人の娘なんだよ私それに.......」

俺はきっとこの日君の話しを聞くべきではなくて

この話しを聞いて君に返す言葉なんて見つからなくて

でも喫茶店を出て見送った君の後ろ姿を見つめながら

なんで君の手をこの時掴めなかったんだろうって帰り道後悔したんだ

君がせっかく話してくれた苦しい話しを受け止めて君に触れることをしなかったんだろうって

多分それは俺が

君よりきっと子供だったからなんだ