ネージュに染まれseason3 (ページ31)

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沈ませて向井side ページ31

目の前の彼女はグラスを少し揺らして甘いチョコレートのように甘いカクテルを一口飲んだ

「私は愛人の娘でさ...」

伏し目がちに呟いた言葉に胸がどきっとする

『....うん』

少し姿勢を正してAを見つめればAは少しだけ頬を赤く染めて俺を見つめたんだ

「それに本妻の息子と変な関係なんだよ？
.....でもラウちゃんは両親がいないんでしょ？」

『え？』

「翔太は妹から恋心を抱かれてて....ねぇ」

眉を下げながら立て続けに口を開くAの言葉に驚かないのは俺が全て知ってるからで

ああそういうことか

『俺も.....俺もあるよ』

俺の言葉にゆっくりと目を閉じたAを見て翔太くんの気持ちが分かる気がしたんだ

高校の頃女子の話してた『承認欲求が強いと恋愛上手くいかないってばー』なんて言葉を思い出しながら

「中学の頃な俺事故に遭ってなひかれそうになってんけどな......兄貴がな...かばってくれて......で」

どれほど時間が経ったって鮮明に思い出す

カメラのシャッターでも押したみたいに

全部全部全部鮮明に

『ありがとう』

「え」

『もういい言わせてごめんね....それにありがとう』

こんな時にこんなことを思うのは多分違うと思うけど

目の前で眉を下げながら笑うAを見て

自分自身に言い聞かせるように俺に言い聞かせるように大丈夫だよなんて小さな声で呟く君を見て

そんな君を

あ、俺は好きなんやってこんな瞬間に強く思ったんだ

君のお洒落なネイルがキラリと光って見えて心がどきっとする

こんなふたりの時間が明日も明後日も続けばいいのにって

苦しいはずなのにあまりにもお洒落な店にあまりにもお洒落な音楽が君とのこの時間がまるで初めてのデートのようで

『今日誘ってくれてありがとう』

全部の言葉を飲み込んでありがとうを伝えた俺に君は頭をかきながらとておきに甘い言葉を呟いたんだ

「なんだろう帰りたくないやなんでだろ帰りたくない今日」

そんなの

君に溺れてく違いなくて

君に沈むには十分すぎる言葉だよね