ネージュに染まれseason2 (ページ44)

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本当は内緒岩本side ページ44

「うわあ....夕焼け凄い」

車から降りたAは長い髪をなびかせるとぐーっと背伸びをした

映画に買い物にパンケーキにって詰め込んだデートにAは楽しいとか美味しいとか幸せとか言ってて

そんな彼女の言葉が俺はただただ微笑ましかったんだ

『綺麗だね』

「うんとっても」

砂浜に足跡をつけながらひーくんの靴大きいな～なんて言うAはやっぱ可愛らしい

高いヒールはいつのまにか脱ぎ捨てられていて隣を裸足で歩くAはいつもより小さく見えるんだ

あの日君が帰ってこなかったこと

次の日いつものように笑ってたこと

阿部ちゃんとよく夜の散歩に出掛けること

目黒と同じ匂いがたまにすること

心臓が痛むんだよ

「ひーくん？」

小さな口が俺の名前を呼んで髪をかきあげると少し俯いた

『どうしたの？』

名前を呼ばれるだけで心臓がどきっとする

「今度一緒にライブ行ってくれる？」

『え？』

「これが私のお願いだよ
はじめてのデートほんっとに楽しかった」

顔を上げてにっこり笑うのは

それは反則だよ

そっと近寄ってAをぎゅっと抱き締めた

『約束するね一緒に行こう』

「...ありがとう」

『だからさA曖昧な関係ひとつでいいから終わらせられない？』

「ひーくん？」

『Aはきっとそんなに弱くないよもう』

ごめんね

ただの俺の嫉妬なのにね

少なくとも曖昧な関係がひとつではないことを知った俺は少しでも君をそばに置いておきたいって願うんだよ

俺の背中にそっと触れたAの手がやけに優しくて

「...約束するよだからひーくん約束だよ」

Aの掠れた声に頷いて俺は君のことをもう一度ぎゅっと抱き締めたんだ

俺の本当のお願いにはまだ気づかないでね