ネージュに染まれ (ページ25)

今日:51 hit、昨日:47 hit、合計:1,845,481 hit

雪は溶けずに固まって深澤side ページ25

昨日は飲みすぎた

いい大人のくせに昼過ぎまで休みを無駄にして気怠い身体を無理やり起こして階段を降りた

リビングのドアを開ければAがひとりで笑いながらお昼の番組を見てる姿が目に入る

『おはよ』

冷蔵庫へ向かいながら呟いた俺の挨拶にAは大きな声で俺を呼んだ

「ふっか！ちょっとちょっとおいでおいで」

今その声の大きさは頭痛いんだけど

なんて言えないから冷蔵庫から水を取り出して俺は黙ってAの方へと足を運ぶんだ

ゆっくり隣に座った俺を見たAは笑ってテレビを消す

『見ないの？』

「あー見てないからね」

嘘ばっかだな

この番組のこのコーナーが好きだとこの前阿部ちゃんに言ってたくせに

「はいふっかどうぞ」

『なにこれ？かき氷？』

「そうそうかき氷機をねついこの前買ったのよね
だからどうぞお食べなさい」

気まぐれな彼女が気まぐれな気分でなにかを買うのは珍しいことではないことはつい数週間でしっかり把握した

『あーでもあたまいたいんだよね』

二日酔いだわ～なんて笑って水を一口飲めばAは大きなスプーンでかき氷を一口すくって笑う

「はちみつ味」

俺の口元までご丁寧にスプーンは運ばれて渋々口を開ければ口の中にほのかに甘いはちみつの風味が広がった

「ふっかが思ってるより起きるの遅いから私三回もおかわり食べたんだよ」

ほのかに甘いはちみつは今の俺に丁度良くてAからスプーンをゆっくり奪ったんだ

ねえ

俺が起きてくるまで待ってたの？

そんな言葉は口から出なくて

『ありがと』

Aを横目で見て笑えばAは満足そうに笑うんだ

「雪みたいで気持ちいいでしょ？」

ああだめだ

俺ね

思ってるより酔ってるかもしれない

君の優しさが心地よくてこのまま時が止まればいいのにとか思ったんだわ

君の首元に貼られる湿布は見て見ぬ振りをしてね