89 ４時間 ページ40
「じゃあ、作るから適当にして」
そう声を掛けると、二宮は「はいはい」とポケットからゲームを取り出した。
それを横に見ながらまずは使い慣れたエプロンを身に着け、レンジでジャガイモを蒸す間に冷蔵庫に大量にあるみじん切り野菜とひき肉を炒めながら隣の鍋ではベーコンを炒め、奥の小さい鍋でカボチャを煮る。
二宮が半ば呆れたようにこちらを見ていたのには気付かなかった。
時間を忘れて黙々と料理をしていく。
カボチャのミートパイ、ベーコンと野菜のスープ、いろいろ野菜のグラタン、カレー、最後にコロッケ。
グラタンはホワイトソースも自作した。
無意識に手を休めないようにしていたのかもしれない。
無心で料理して、コロッケ数個を揚げて顔を上げると、帰ってきた時はまだ青かった空が夕日の赤を超えて暗くなっていた。
時計を見れば８時になるところで、４時間近くこうしていたことになる。
「二宮」
すっかり忘れていた存在に声を掛けると「やっと気が済んだ？」と見ていたテレビから振り向く。
テレビが点いてる事も気付かなかった。
「ごめん、放置して」
「別に？
作れって言ったの俺だし。
まあ、激烈にハラは減ってるけど」
「好きなの取っていいよ。・・・っあ！」
カトラリーを出しテーブルいっぱいに載った料理を勧めたところで、あるとんでもない事に気付く。
そうだよ。
おかずばっかりたくさん作ったけれど、それと一緒に食べる主食の準備をし忘れていた。
カレーもあるのに。
「なに」
「ごめん。お米、炊くの忘れた」
「は、」
おもいっきり、超これ見よがしな溜息をつき、呆れた顔で「なにやってんの」と呟いた二宮に今日ばかりは何も言い返せないし、何を言われてもしかたない。
「お前ねぇ」
と開いた口に罵詈雑言を覚悟したけれど、吐かれたのは特大の溜め息。
そして
「あーあ・・」
という諦めのような声。
「二宮・・？」
「なに」
「・・・何って」
こんな時、いつもの二宮なら延々嫌味を言うと思うのに。
・・・とはさすがにそれは言わないでおくのが賢明だから黙っていると、すかさず二宮が続けた。
「そんだけ動揺してたって事だろ。
文句は智に言うわ。
お前がちゃんとしないから俺の４時間無駄にしたって」
チクリと刺すのは忘れないあたりソコは二宮だけど、棘はいつもよりずっと小さい。
笑いながら揚げたてのコロッケをつまむ丸っこい手に、少しだけ優しさを感じた。
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美穂(プロフ) - こんにちは！おかえりなさい！更新ありがとうございます。とっても嬉しいです！！ (2020年2月19日 11時) (
レス) id: 519acbf0c0 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 青藍さん、こんにちは！更新ありがとうございます！嬉しいです。とりあえず誤解が解けて良かった〜。 (2020年2月19日 8時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - お帰りなさい！続き楽しみにしてました。書き続けてくれてありがとうございます。 (2020年2月18日 21時) (レス) id: 4f8e80d38c (このIDを非表示/違反報告)
seiran(プロフ) - ともさん» ともさん、初めまして！お越し頂きありがとうございます。櫻井くんのお話が多い私ですが実も私智担です♪色々ショックと仕事の多忙が重なりツクールを放置してましたが、また少しずつ更新していきますので、宜しくお願い致します♪コメントありがとうございました。 (2020年2月18日 21時) (レス) id: ab941cee45 (このIDを非表示/違反報告)
seiran(プロフ) - 美穂さん» 美穂さん、こんばんは♪やっと更新致しました。待ってて下さりありがとうございますm(_ _)mこれからまた少しずつ更新していきますので、お付き合い頂けたら嬉しいです♪コメントありがとうございました (2020年2月18日 21時) (レス) id: ab941cee45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青藍（せいらん）
作成日時：2017年5月23日 12時
