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惜別の.5 【tngr】 ページ5

ーーー

*tnside

「っ!グルッペン!」

「っあ……とん、とん…?」

「大丈夫か?!それに、その紙は…」

チラリと薔薇色の紙へ視線を向ける

「あ、あぁぁ、いや、いやだ!」

グルッペンは取り乱して、その蒼い目から涙の雫を零す。

「落ち着いてくれグルさん。取り敢えず家、入ろか?」

「あ、あぁ…いやだ…」

うわ言のように嫌だと呟き続けるグルッペンを俺たちの部屋へと連れていきベッドに座らせ、
先程玄関であの兵隊と話していた時に濡れたであろう髪を拭いてやる。

「グルさん、何があったん?」

「……。」

全く話そうとせず、放心状態になってしまっている。

「ん〜。取り敢えずその紙見してくれる?」

そう問いかけるとゆっくりとこちらに紙を差し出してくれた。

「ありがと」

目が痛くなるようなその紙の文字に目を走らせると、

「これは……俺への、徴兵令…?」

そう呟くとグルッペンは顔を勢いよく上げ、

「と、とんとっ、いやっ、い、いかないでくれ」

、と涙を流しながら訴える。

「グルさん。」

俺は彼の名前を呼び、その隣に座って優しく涙を拭う。

「グルさん、泣かんといてくれ。な?」

「で、でも…徴兵なんて、そんな…そんなっ」

「…俺は行こうと思う」

俺は行くべきだと、そう思った。

「な、何故だっ?!母さんが言っていた通り、金を払えばっ!」

「いーやグルさん、俺は元々ここの家の者じゃない。いつまでもおんぶにだっこじゃあかんやろ?」

「でもっ!」

「それに!俺は親父さんみたいにグルッペンと義母さんを守りたいんや」

グルッペンの父は軍人でもあった。
数年前、隣国とあった戦争。
そこに向かい、帰らぬ人となった。
しかし俺は、親父さんが戦争へ向かう前、
一つの約束を交わしていた。

『トントン、俺は多分ここへはもう戻れない。グルッペンもAも弱いからな…お前が守ってやってくれ』

その言葉に返す時が今なのだろう。

「な?グルさん。あんさんらの未来のために、少しは活躍させてくださいよ」

そう言って笑いながら彼の頭を撫でる

「いやだ……お前がいない未来なんて価値もない…お前が、トントンが居たから、俺は…俺はっ!」

「でも、俺が行かんとまた他の誰かが犠牲になる。俺なんかに守れる明日があるなら、喜んで向かいますよ」

「トントン……」

その日は、食事も取らなかったグルさんと
久しぶりに手をつなぎながら眠りに落ちた。

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ルカルカ113(プロフ) - ココアさん» 丁寧なコメントありがとうございます!読者様のお言葉が励みになります。こういうところがよかった!悪かった!などお気軽にコメントしてくださるとうれしいです(*'▽') (2019年6月11日 1時) (レス) id: e202de0e6b (このIDを非表示/違反報告)
ココア(プロフ) - いつも作品読ませていただいてます。やはりルカルカ様の作品は面白いです。更新頑張って下さい。応援しております。 (2019年6月10日 21時) (レス) id: 6d6d59ac82 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年6月9日 14時

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