悲しさはきみを綺麗にする ページ38
俺はただただ驚いていた。
前々から何も言わなくても俺の気持ちを掬い上げるように理解してくれる場面は何度かあった。
それでもこんなに1mmのズレもなく俺が聞きたかったことの答えを述べることが出来るのは、稚拙な表現でしか褒められないことが悔やまれるが、凄い。
男は馬鹿だからそれだけで��運命��とか��俺のこと理解してくれてる��と舞い上がって好きになる。
でも、これはよくないことだと理解している。
不満を言わず不機嫌を醸し出してわかって貰おうとするのも(別にいつもなら放って貰えれば自己完結出来ることやけど)、理解してくれることを理由にAちゃんに好きだと伝えることも。
「……すまん」
脈略なく謝ると彼女は困ったように微笑んだ。
「レトルトさんは優しいですね」
こんな俺のどこが優しいのかは理解出来ない。
「優しいわけないやろ」
ぶっきらぼうながら本音も交えて言葉を投げ掛けると語尾に被せるように「だから困ります」と言ったAちゃんは俯き、膝の上に置かれた手でふわふわしてそうなスカートをぎゅっと掴んでいた。
俺の不満は解消してくれたものの今日のAちゃんはやはりおかしい。
そもそも何で家を出てあんなところにいたのかの理由付けはうまい具合に避けられていた。
「飯か？」
「えっ？」
「飯、直前で断ったの気に病んでるんか？」
「………………」
押し黙ったAちゃんを見る限り不正解ではないにしても正解という訳でもなさそうだ。
ガッチさんの言ってた言葉をそのまま聞くのは些かデリカシーがない気がして適切な言い回しを探しているとポツリと小さな声でAちゃんが口を開いた。
「こんなこと、旦那の時も含めて、何回もあったことなのに、おかしいですよね」
「おかしいことないやろ、悪いと思ってる」
「悪くないです！本当に、わたし……」
そこでやっと顔をあげたAちゃんと目が合った。
その瞳は普段より水分が含まれていてそのせいかゆらゆらと揺れていた。
悲しい時、寂しい時、どうしようもない時、笑うことが癖になってるかのように口元は笑みを浮かべていた。
「笑いたくないなら笑わんくてええって言うてるやろ」
その顔が苦手で、それでも愛しくて、少し笑って言うと瞳からひと粒雫が流れ出した。
「わたし、レトルトさんのこと、好きなんです」
そんなん知ってると言い掛けてやめたのは、ファン的な意味ではないことを一瞬で理解したからだった。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
