心のコントロールが効かない ページ18
ついさっきまで外には出れないなんて言ってたのに、発せられた言葉に俺は言葉を失った。
「気ぃ遣ってんの？」
苛立ちに似た何かを覚え意識せずとも声が低くなってしまった。
「いえ、買い物がてら少しだけ、その後はレトルトさんのお家に行って夕ご飯作ります……あ、明日はいらないですか？」
極めて普通のトーンで言われ俺も拍子抜けしてしまった。
「そう、ならええし、ご飯は食べます」
Aちゃんは言葉の裏にいつも気持ちを隠してる。それを全て見抜くなんて今の俺には不可能で、旦那さんには出来ていたのかと思うともういない存在に嫉妬している自分に出会った。
虚しい、意味の無いこと、生産性のないこと、そんなことはしたくないのに。
「さっきの今やから、少し驚いて、心配した」
「……心配してくれるんですか？」
話す時はなるべく言葉を選んでいるのに素直な気持ちが口から滑り落ちてしまい焦ったけど、嬉しさを含んだような声に鼓動が高鳴った。
「そりゃね、まあ……止める権利なんてないし、ただ、無理はせんといて」
「優しいですね、ありがとうございます、おやすみなさい」
おやすみ、そう言って電話を切った。
はぁーと長く深い溜息を吐く。
電話はやっぱり苦手だ、Aちゃん相手だとそれに拍車がかかる。
ただでさえ、表情も素直に出す方じゃないのに声だけだとこと尚更や。
でも少しだけわかった自分もいて少しだけ自信がついたと共に一瞬湧き上がった旦那さんへの嫉妬心に自己嫌悪を感じる。
かなり前にキヨくんが「好感持ってる子が他の男と関わって嫉妬すると本格的に好きって気付く」みたいなこと言ってて何やねん、ソレと笑ったけど今その状況に陥ってることに気付いてしまった。
いや、俺は結構前からちゃんと好きって自覚はしてたはしてたんやけど。
もうこの世にいない人間に嫉妬ほど虚しいもんはないな……そんなことを考えながらいつの間にか眠っていた。
次の日、少し早めに家に向かうと出掛ける準備をしてるAちゃんに鉢合わせてしまった。
「あ、おはようございます」
「おはよ」
「眠そうですね」
ふふっと少し笑ったAちゃんは窓から差し込む光に当たっていつもより顔が明るく見えた。
ほっと安心してこっちもつられて笑みが零れる。
「それでは、出掛けますね」
「気を付けてね」
「はい、いってきます」
「いってらっしゃい」
部屋はいつもより綺麗な気がして気遣って掃除をしてくれたAちゃんの優しさが滲み出ていた。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
