奪われたくない存在理由 ページ11
あいつらには言おうとは思ってたけど、どう切り出そうか悩んでた。
曲がりなりにも視聴者だし、良い顔はされないことだけは、はっきりとわかる。
俺ん家にAちゃんが住み始めて数日、Aちゃんは「何もない限り夜飯は家で一緒に食べること」という俺との約束をきちんと守ってくれた。
俺が普段飯作ってなかったのもあってAちゃんは「仕事もしてないのでこれくらいさせてください」と毎日料理を作ってくれた。
お世辞なしで本当にうまくて、その通り言葉にする「レトルトさん、好き嫌いなくて作る甲斐があります」と喜んでいた。
旦那さんが「美味しいよ」と言ってくれた記憶も忘れてないんやろうけど、初日みたいには泣くことはなかった。
俺に怒られるのを気にしているのか知らんけどあれ以来「死にたい」とか自 殺未遂みたいなことはしてないようやけど、逆に俺に言えないってことは誰にも言えずに抱え込んでしまってることがあるかもしれん。
泣かんくなったことも死にたいと言わなくなったこともいいことではあるけど、俺が怒るから我慢してるんなら俺がいる意味がない。
「あ、あの」
「ん？」
「わたし、明日から仕事復帰します」
「そうなん？」
「はい」
大丈夫？とは聞かなかった。
必ず、大丈夫じゃなくても大丈夫と言って作り笑顔することはわかる。
「俺、怒んないからさ」
「……？」
「泣きたくなったり、死にたくなったら、いつでも俺んとこ来ていいから」
目を真ん丸くして俺を見ていたAちゃんは、少し困った顔をした。
「今でも、涙は出ますし、死にたいって思うことはあります」
そりゃそうやろ。
まだそこまで日にちが経ってる訳やない。
1人でいると、どうしても考えてしまう。
人といる時は忘れられても1人になると思い出して落ち込むこと誰にだってあるもんやし。
「でもね……でも、レトルトさんの存在のおかげで、毎日、わたし……生きてます」
はにかみながら笑うAちゃんは「ありがとうございます」とぺこっとその場で頭を下げた。
「そうなら、良かった」
そうだ、と思い出したように俺はポケットから鍵を渡した。
「これは……？」
「明日、TOP4で撮影あるから仕事終わったらこっち来て」
「そうなんですね、わかりました」
入居の時に無駄に4つも貰ってた鍵。
こんな形で女の子に渡すことになるなんてあの頃の俺に話したって絶対信じない。
「なんでそんなめんどいことやってん？俺らしくない」
そう言われるんやろうな。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
