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マスターキーなんてありません ページ47

部屋備え付けの電話が鳴り響いた。
重い身体を引き摺ってそれを取ると聞き慣れた愛しい子の声が覚醒前の脳に響き渡った。

「起きました?!こんな、個人的にモーニングコールなんて本当はだめですからね?!」
「いいじゃん、最後なんだしさ〜」

電話を切られた機械音が返事の代わりだった。

「全く素直じゃねーなー、俺のお姫様はよぉ」

2ヶ月の連泊、最俺ハウスとの往復もきょうで終わりだ。
昨日まとめた荷物は夜中に狙って出しに行った。
そして戻る振りもせずに「鍵忘れたから開けにきて♡」と言う作戦を実行した。
「せめて戻る振りくらいしてください」と怒りを堪えるAに「最後の館内デートしよ〜よ〜」と駄々こねると「部屋の鍵開かないんじゃ行くしかないでしょ」と折れてくれた。

気持ちを伝えた日に見た夢のせいで全ての記憶を思い出した俺だったけど伝えずにチェックアウトを迎えた。

「お世話になりました」

シャワー浴びて着替えて手荷物だけ持ってフロントへ向かうとニヤついたあやちゃんに出迎えられた。

「お姫様は朝食取ってますよ」
「はいはい、あやちゃんにも世話んなったな」
「結婚式には呼んでね」
「その前に自分だろ」

ひらひらと手を振るあやちゃんの左手薬指に光るシルバーリングを見て言うと「連名で呼ぶね」と微笑んだあやちゃんは最初に見た時よりも落ち着いた印象へと変化していた。

朝食会場への階段を降りて難なく目当ての人物を見つけると目前の席に荷物だけ置いて「お迎えでーす」と言うと丁度食べ終わったらしい彼女は「お疲れでーす」と返事をした。
メニュー表にとろろと書いてあったから絶対食うのはわかってた。
あの日に駄々こねてたAも遠い記憶な気がするもそんなに経ってないことに驚く。
それくらい毎日、俺とAは会っていた。

「電車なんだろ?」
「わざとですよ」

片目ウインクしてきたAがずるくて可愛くて天を仰ぐと「ツボりました?」とちょこまか俺の周りをうろつくAの手を握った。
そのまま裏口を出ると無言で引っ張るようにして駅に向かった。

「反対側ですよね?」
「そう」

ホームに着いてやっと手を離した俺に戸惑うことなく自然に話しかけてきたAに、ほんと動じねぇなと思いつつ逸る鼓動を抑えた。

「んま、これからも1歩1歩確実に行こ、2人でさ」

ホームに電車が入ってきた。

「マスターキーなんてありません」

固まったままのAの唇を奪ってひとつウインクをする。

「だろ?」

After word→←記憶のカケラに繋がる夢



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作品ジャンル:恋愛
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luco(プロフ) - siratama〇さん» siratama〇様、コメントありがとうございます!初の学パロ以外での長編ですので読者の方の反応が気になっていたのですが好みと言って下さりとても安心しました。そして長編に対しての励ましのお言葉もありがとうございます!とても嬉しいです。頑張ります! (3月9日 22時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - 好みof好みです。長編苦手だと仰りますが胸を張って得意だと叫べるレベルで素晴らしいです。素敵なお話ばかりで読むのが楽しみの1つになっています。ずっと応援しております、頑張って下さい! (3月9日 20時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:luco | 作成日時:2019年3月7日 1時

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