指から伝えたい記憶と気持ち ページ35
Aが部屋の椅子に座るよう俺を促してきたけど遠慮して「Aが座りな」と肩に手を置いて強制的に座らせた。
隣にしゃがみこむように座った俺は浅く息をして横たわる女を見たままAに話しかけた。
「この子は……家族いないんだよ、身内も、親戚も」
「え……知り合い……なんですか？」
驚いた顔で俺を見てきたAの方を向く。
「レトさんの女……つーか、好きな女？」
「さっきカフェで言ってた人ですよね？」
「そう」
Aには夕方に会ったこととかいろいろ理由があって撮影部屋に住んでることしか言ってなかった。
彼女の過去は言うべきではないかもしれない。
でもレトさんに会いたくなくてここにいるのであれば、1番彼女の心に寄り添い話を聞いてあげられるのは俺じゃなくてAが適任だ。
どうしたもんか、と考えていた俺にAがポツリと呟いた。
「ゆびわ」
「は？」
「指輪の跡がありますね、焼け跡、ほら」
そっとこちら側にある彼女の手を指差したAの指を辿るとそれは左手の薬指だった。
確かに言われれば少しそこだけ肌の色が違う気がした。
「いろいろ、でしたっけ」
末恐ろしい女だと思った。
普通そんなとこに気付くやつなんて警察とか探偵とかドラマの中だけの話だとしか考えられない。
例えばAと付き合えたとして嘘吐いてもバレそうだな、うん、賢い女は好きだ。
話が早い、掻い摘んで話そうとした時に俺のケツに挿さってるスマホがバイブレーションした。
「お呼び出しですかね？」
言ったあとに手に持ってたAのスマホも震えだしたようで、眉を下げてにへらと笑った。
「同時ですね」
「……だな」
不謹慎だけどこの状況が俺にとってはなぜか泣きたくなるほど幸せでほぼ同時にスマホのロックを外して通話を切るボタンを押していた。
どちらからともなく俺は左手、Aは右手を、ゆっくりと繋ぎ合わせる。
指の先から気持ちが伝わるように、俺は目を閉じた。
「……んっ」
その声により我に返ったAはそっと俺の手を離して心配そうに彼女を覗き込んだ。
俺ってつくづく気持ちが昂るタイミングがいいんだかわりーんだかよくわかんねえな。
俺は小さく溜息を吐いてから彼女を見るとゆっくりと瞳を開けた。
「あ、気付きました？」
「あ、あの、すみません……ありがとうございます」
「平気ですよ、レトルトさんに連絡しますか？」
「えっ」
チラと俺を見た彼女に「ども」と言って軽く会釈した。
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なみの - とっても面白いですね( ´∀｀)相変わらずの天才っぷり・・さすがです！毎回素敵なお話ありがとうございます(≧∀≦) (11月5日 13時) (
レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» これは完全に動画内のヨさんのテンションで書いてたので反応どうかなと思っていたので好きと言って頂けて良かったです。たくさんの作品にコメント本当にありがとうございます。レスが遅くなりましたが毎回見て元気を貰ってます！ (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - キヨさんの嫉妬とか御馳走様過ぎる。キヨさんが元々レトさんに憧れていた節があったからこそキヨさんの嫉妬って映えると思ってニヤニヤしてました。キヨさんがドルヲタとか女優ヲタとして動画内で喋っているテンションで恋して、本人っぽさが倍増するのも好きです。 (2021年8月9日 2時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - siratama〇さん» siratama〇様、コメントありがとうございます！初の学パロ以外での長編ですので読者の方の反応が気になっていたのですが好みと言って下さりとても安心しました。そして長編に対しての励ましのお言葉もありがとうございます！とても嬉しいです。頑張ります！ (2019年3月9日 22時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - 好みof好みです。長編苦手だと仰りますが胸を張って得意だと叫べるレベルで素晴らしいです。素敵なお話ばかりで読むのが楽しみの１つになっています。ずっと応援しております、頑張って下さい！ (2019年3月9日 20時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月7日 1時
