その感情の名前を知っている ページ28
部屋のカーテンを閉め忘れたせいで月明かりに反射した赤い後ろ髪がチカチカと目に光を差し込んでくる。
「知んねぇ人は知んねぇか」
小さな声で呟く彼に「申し訳ありません」と頭を下げると「あっ、謝んないで、ください」と焦らせてしまった。
「俺の名前はキヨ」
「キヨ……様？」
「あー……はは、様付けはあれだからキヨさんでいいよ」
「キ、キヨさん」
「はい、お姉さんの名前は何ですか？」
名前を言おうとした瞬間にまた気持ち悪くなったらしくベッドにうつ伏せに横たわってしまった。
背中を擦りながら時折水をあげたりしていると、少し回復したらしいキヨさんは唐突に「お姉さん、この仕事好き？」と聞いてきた。
ドキッとした。
心の奥を見透かすような瞳に視線が逸らせなくて「いまは、あまり」と眉を下げて笑うとキヨさんはそれ以上は詮索しなかった。
「俺はね、いまの仕事……仕事って言うんかわかんねえけど好きなんだー」
その笑顔は曇りも嘘もない顔で羨ましくもあった。
「楽しいし、俺のおかげで元気になったって言ってくれる人も増えて、それが嬉しいんですよ」
「あなたのおかげで良い一時過ごせたよ」と初めてお客様に貰った感謝の言葉を思い出した。
「思ってたのと違うなーとか、そりゃ辛いこともたくさんあっけど、やっぱりやってて良かったって思うこともたくさんあんだよね」
心が何かで洗い流されてるような感覚だった。
自然と瞳から零れ落ちてきた涙に気付いたキヨさんはギョッと驚いて「大丈夫？！」と焦っていた。
「大丈夫です」と咄嗟に握られた手を包み返すと少し照れたような様子を見せたキヨさんは「……だからって訳じゃないけど、お姉さんのおかげで俺は助かってます……よ」重そうな瞼を懸命に開けながらそう言ってくれた。
それから一言二言交わした言葉もわたしを救ってくれた。
「ゆっくりお休みください、お水ここに置いておきますね」
そう言ってから立ち上がろうとしたけれど、それは伸ばされた腕によって叶わなかった。
「待って、俺さ、動画投稿してんの、名前検索して」
「え……？」
「俺の動画見てみて」
力なく離れた腕をベッドの上に戻してから寝息を立て始めたキヨさんに「はい！1番のファンになります」と言ってマスターキーだけを持って部屋を後にした。
仕事の大事なことを教えてくれた人の動画は楽しくて面白くて新しい世界を教えてくれた。
それと同時に仕事をし始めてから初めて抱いしまった感情に戸惑いもあった。
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なみの - とっても面白いですね( ´∀｀)相変わらずの天才っぷり・・さすがです！毎回素敵なお話ありがとうございます(≧∀≦) (11月5日 13時) (
レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» これは完全に動画内のヨさんのテンションで書いてたので反応どうかなと思っていたので好きと言って頂けて良かったです。たくさんの作品にコメント本当にありがとうございます。レスが遅くなりましたが毎回見て元気を貰ってます！ (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - キヨさんの嫉妬とか御馳走様過ぎる。キヨさんが元々レトさんに憧れていた節があったからこそキヨさんの嫉妬って映えると思ってニヤニヤしてました。キヨさんがドルヲタとか女優ヲタとして動画内で喋っているテンションで恋して、本人っぽさが倍増するのも好きです。 (2021年8月9日 2時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - siratama〇さん» siratama〇様、コメントありがとうございます！初の学パロ以外での長編ですので読者の方の反応が気になっていたのですが好みと言って下さりとても安心しました。そして長編に対しての励ましのお言葉もありがとうございます！とても嬉しいです。頑張ります！ (2019年3月9日 22時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - 好みof好みです。長編苦手だと仰りますが胸を張って得意だと叫べるレベルで素晴らしいです。素敵なお話ばかりで読むのが楽しみの１つになっています。ずっと応援しております、頑張って下さい！ (2019年3月9日 20時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月7日 1時
