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入稿に向けて追い込みをかけているであろう梁さんのことが気になって、陣中見舞いにとお菓子を買ってJワークスさんの事務所を訪れた。
アポ無しで来て悪いかなと思ったが、思わぬ収穫。
ウチへ来るときの梁さんはジャケットを羽織ってたりするけど、今日の格好はもっと素に近くて新鮮。
メイクも薄くて、いつもよりちょっと幼く見える。
「ぬぅぅ…小瀧さんがくるって分かってたら、ちゃんとしてきたのに」
そう言ってくやしそうにしている表情に、俺はほんのり自信をもらっちゃったりするわけだ。
そこへ、様子を伺っていた事務員らしき女性が歩み寄ってきた。
梁さんの手に握られた紙袋を見つけて声を弾ませる。
「わあ!“よね澤”のたい焼き!」
「みなさんでどうぞ」
「ありがとうございますー
せっかくなのでお茶でも!」
「や!ほんまに急に来ちゃったんで、おかまいなく」
「お気になさらずー!ねえゆりちゃん」
いやにテンションの高い女性は、この状況を楽しんでいるようにも見える。
なんか、ウチの受付嬢の田村さんを彷彿とさせるものがある。
「そうですね今井様。
小瀧さん、お急ぎじゃなかったら」
「じゃあ、ちょっとだけお邪魔します!」
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「こちらにどうぞ」
「失礼しまーす…」
梁さんに通されたのは応接室ではなく制作室。
「すいませんちらかってて…応接室が今あいてなくて」
紙や道具類が所狭しと並んでいる、ここが梁さんたちの仕事場なんやなぁと思ってつい見渡す。
デスクには3人の男性が作業をしている。
「あ、やっぱのんちゃんや」
モニターの影からひょこんとひとつの頭がのぞいたと思えば、聞き覚えのある軽薄なテノール。
「…はぁっ!?廉!?」
「えっ、廉くんと小瀧さん知り合いなの?」
俺も驚いたが、梁さんも同様にびっくりしている、
「地元が一緒で、中学んときからの知り合いなんすよ、ゆりせんぱい。」
「そうなんだー」
「せんぱいが“小瀧さん”言うてたから、もしかしてって思っててん」
「なんやねん!ゆえやー!」
思わぬ再会にしばし喜んだが、冷静に考えてみたら廉の状況めっちゃ羨ましない!?
『ゆりせんぱい』やで?『廉くん』やで!?
「廉おまっ、梁さんに指導してもらってんのか」
「手取り足取り教えてもろてますわぁ」
「キーー!!」
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るーちょ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます!応援いただきとても励みになります(T-T)最終話までぜひお付き合いください。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 5adc9338ef (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - とても面白いです! 応援してます! (2019年7月19日 6時) (レス) id: 622cccb941 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lucio | 作成日時:2019年7月8日 18時