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学生の頃から、神ちゃんはいつも優しくて、わたしはいつだって背中を押してもらっていたよね。
学園祭に出す作品を着想した時だって、自信がなかったのはわたしのほう。
『神ちゃん、どうしよう〜〜』
『梁ちゃんなら大丈夫やって!写真なら俺にまかして。梁ちゃんの思ったようにやってみって。』
『キャンバス、大き過ぎるかなぁ…?』
『んや、梁ちゃんの思ったこと表現するには、これくらいがええんやない?』
徹夜続きでグロッキーになってた時でも、神ちゃんが持ち前のおかんを発揮してくれたり。
『神ちゃん〜〜〜もうだめ、、』
『もうちょういやって!
夜食作ってきたからがんばろ!』
神ちゃんといっしょじゃなかったら、あの作品は完成してなかったし、
あれがなかったら、今のわたしはいなかった。
今のわたしの原点。
「ありがとね…わたし、もっとしっかりしないとね。」
「おん、いつでもまたおいで。」
寝転がっていた姿勢からよいしょっと起き上がって、神ちゃんに向き合ってお礼を述べた。
神ちゃんは、またコロコロと笑って頭に手を置いてくる。
いつでもおいでって、言ってくれる人がいるってありがたいなあ。
「うん。ねえ、これ見せたい人がいるんだけど。」
これと言うのはもちろん、街を泳ぐ熱帯魚たち。
学生時代のこの作品を、見てほしい人がいる。
「ん、ロックの暗証番号教えとくから、いつでも入ってきて見てええで。」
「ありがと!」
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神ちゃんのスタジオを後にして、家路につく。
陽は沈みかけていて、今朝のような薄紫色の空だ。
住宅街のそこここで、夕飯のいい匂いがふんわり漂ってくる。
「ただいま〜」
「あらっ、ゆり!珍しく早いなぁ。」
リビングに入ると、食事の支度をしていた母が台所からひょっこり顔を出す。
「昨日、会社に泊まっちゃったけ、淳太さんがはやく帰れってさ。」
「ふーん。泊り込みなんてしちょった割には、肌つやいいねえ。」
しげしげと私の顔を見やる母。
思わず両手で両頬をはさんだ。
「なんかいい事あってや?」
…いい事。
いい事なのか?
母の問いには答えず、そそくさと二階の自室にひっこんだ。
作)細かい設定ですが、家族と話す時はゆりさん出雲弁です。
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るーちょ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます!応援いただきとても励みになります(T-T)最終話までぜひお付き合いください。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 5adc9338ef (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - とても面白いです! 応援してます! (2019年7月19日 6時) (レス) id: 622cccb941 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lucio | 作成日時:2019年7月8日 18時