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突如やってきた藤井さん。
何をしに来たかと思ったら、今現在わたしの作業中のPCモニタをじっと見ているだけだ。
長い足で椅子をまたぐように座って、背もたれに頬杖をつく姿はそれだけで絵になる。
「あのー…」
「んん？」
「面白いですか？見てて。」
「うん。こんなきれいなの作るんやね」
そうかきれいか。
存分に見ていってくれ。なんて、ちょっと誇らしい気持ちになる。
作業の手は止めることなく、画面上に“アルコイーリス”のボトルやロゴやイリスくんの写真を、文字とともにレイアウトしていく。
マウスのカーソルがあちこちに動くのを、せわしなく目で追っている藤井さんは、猫みたいでちょっとかわいい。
「藤井さんて、ちょっと変わってますね」
「…その藤井さんっていうのやめへん？」
「どういうことです？」
目を細めて眉間をしわしわとさせ、藤井さんが不満げにこちらに向き直る。
「流星って呼んでや」
「無理ですよ」
「めだかって呼ぶで」
「どうぞ」
「なーんーで！」
ぶっちゃけ呼び方なんてなんだっていい。
デザイナーと被写体。
私達の一過性の人間関係には、つける名前がない。
「ファーストネームのほうが親密感出るやん！？」
出してどうなると…
だけど藤井さんがあんまりにも騒ぐから。
忘れてたけど別室で淳太さん寝てるのに！
あーもー！
「わかりましたって！りゅ、う、せ、い！これでいい？」
「…んふ、そうそう。スナオやないなあ。ゆり。」
とたんにご機嫌になって、にっこりと笑った。
流星の笑顔は
まるで はちみつがしたたるみたいだ。
「…ていうか、何しに来たの？」
「撮影帰りでたまたま近く通ってん。
まだ電気ついてるから、ゆりおるかなーって。」
「それだけ？」
「あかん？」
「……あかんくない」
不思議。
芸能人と2人っきりというこの状況で、theがつくほど一般人のわたしが、何でこんなにもフツーでいられるんだろう。
わたしの心臓が強いせいかな。
流星の気安い雰囲気のせいかな。
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作)めだか呼びに「？？」ってなった方は第10話をごらんください
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年6月9日 14時
