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静かな部屋に雨の音と蘇比様がガレットブルトンヌを咀嚼する音だけが響く。
俺は、蘇比様の邪魔にならない程度に乱雑に積み上げられた机の上に広がった書類を期限順に並べていた。
「横尾。」
「はい。」
完全に自分の世界に閉じ籠ったように見えた蘇比様が、俺に声をかけた。
声をかけながらも、視線は窓の外に固定され遠くを見つめる瞳のままに。
「おかわり。」
おもむろに差し出された白磁のカップ。
蘇比様の視線は窓の外を見つめたままに。
もしかしたら、見ているのは外ではなく、その向こうで雨に沈む街の人々の生活なのかもしれない。
この方の独特の観察眼にはいつも舌を巻く。
だから聞いてみたい。
この方の見えているものを。
「お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「何?」
「空気が変とは一体どういった意味ですか?」
椅子に座る蘇比様から無意識の上目遣いで見上げられる。
この方も、ミツ同様に年齢にそぐわない幼い顔つきだ。
その童顔の中で異彩を放つ瞳が、真っ直ぐに俺を見つめる。
「横尾。」
「はい。」
「国を、一番知っているのは誰だと思う?」
「国を……でございますか?」
「そうだ。」
「陛下……ではないのですか?」
「違うな。」
「では、蘇比様では?」
「違う。」
「…………。」
言葉に詰まってしまった。
陛下でも蘇比様でもない、国を一番知っている人?
誰だ?
そんな俺を見て、蘇比様は何処か嘲笑ともとれるような笑みを浮かべて。
この方は、時々こういう顔をする。
こういう顔をしている蘇比様は、確実に俺を試している時だ。
決して優しく導いてくれる人ではない。
答えを言う前に、必ず俺に考えさせる。
いつもならば、俺も頭を捻るけれど……これはわからない。
困った顔をした俺を見て、蘇比様は再び緩く笑って。
「国を一番知っているのは……民だろ。」
「民……?」
「民は知ってんだよ。それとわからなくても、国の温度を肌で感じ取る。」
「蘇比様……あの、仰っている意味が……。」
「わかんない?」
「……申し訳ありませんが……はい。」
「んー……そうだな……地方で、小麦の生産量が落ちたらどうなる?」
小麦!?
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時