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トンっと、そのまま閉めた扉に
夜風が、ふわり頬を撫でていった。
仕方ない。
仕方ないんだ。
俺達の道は、これからも続く。
全てをかけてアイドルとして生きているんだ、俺達は。
そして、俺と北山はこれからも相棒として生きていく。
隣で、時に背中合わせで、少しだけ歪なこの道を。
「ふふふ・・・」
漏れたのは、自嘲の笑みだった。
自覚してから終わるまで、恐ろしいほどのスピードで走り抜けてしまったことが妙に可笑しかった。
これで、終わりにしなくては。
俺の・・・俺だけの我が儘で、みんなの夢に亀裂を入れるわけにはいかないから。
俺達は夢を売るアイドルだけれど、グループ自体が俺達7人の夢だから。
7人で作って、スタッフに支えられて、ファンのみんなに大きくしてもらった・・・終わらない夢だから。
カツン────────・・・。
俺は、ひとつ大きく息を吐いて足を踏み出した。
整然と敷き詰められたイングリッシュストーン。
一歩、また一歩と進む度に、響く足音。
それほど大きくない音のはずなのに、俺の耳には何故か大きく響いた。
それはたぶん、進む度に北山との距離が開く気がするから。
物理的な距離だけでなく、心理的に。
っ、
そう思ったら心が痛くて、思わず足を止めて振り返ってしまう。
もちろん、その扉が開かれることはない。
無機質にそこにあるだけだ。
けれど。
そうだけれど。
何故だろう。
その扉のすぐ向こうに北山がいる気がしてしまう。
何故そう思うのかと聞かれたら、理由なんてない。
ただ。
─────ん?、勘。
そう、これもたぶん俺と北山だからわかることかな・・・なんて、微々たる繋がりを求めてしまうのは、俺の弱さだろうか。
その場に自分を縫い止めてしまいそうな感傷を振り切るように俺はまた歩き始めた。
そうして少し歩いて大通りへ出てタクシーを拾う。
自宅付近の住所を告げれば、音もなく車が夜の闇を滑り始めた。
窓から見上げた空は、月も星もない闇夜で。
闇が全てを呑み込んでしまえばいいのに。
あの日、美しい音の魔力を纏った北山。
知らなかった顔。
知りたいと思うのは、興味だ。
知られたいと思うのは、欲だ。
知って、そして知られる事は、共有だと思う。
それら全てをひっくるめて、恋と呼ぶのかもしれない。
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流華(プロフ) - sioriさん» 一番乗りコメント、すごい嬉しいです♪♪やっぱりここを少しだけスクロールすると「作成日時」が残るじゃないですか。その日付を残したくて(笑)素敵な恋!?(笑)んー・・・素敵な恋もそれなりにありましたけど、素敵じゃない恋もたくさんありましたよ(笑) (2021年9月18日 23時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さん、やった!1番(笑)北山くんの誕生日に続編を更新してくれて嬉しいです!そしてやっぱり流華さんの言葉選びが本当に大好き。どんな素敵な恋をしてきたんですか?(笑)ふふ。この先どうなっていくのか楽しみです! (2021年9月17日 18時) (レス) id: 2b4c1e0fcf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2021年9月17日 18時