それを恋と ページ1
.
ちゅ。
小さな音を立てて、その指先から唇を離して北山を見上げれば・・・
その顔はひどく苦しそうに歪んでいた。
「きたやま・・・?」
「バカかオマエ・・・ダメだろ、そんなの・・・。」
掠れるような声で呟いて視線を俺から逸らして、指先を引っ込めた。
悲しそうに切なそうに揺れる瞳に薄く水の膜が張る。
いつもよりも断然小さく見える姿に、俺は喉が急速に干上がっていくのを感じた。
だって。
北山は、いつも前を向いていた。
己が揺らぐようなところは見せない。
それは恐らくは北山のプライドで。強さで。
なのに、今──────・・・
苦しそうに歪む表情。
切なそうに揺れる瞳。
それはまたも、今まで垣間見たことさえない北山だった。
わかってはいた。
プライベートはほとんど知らないのだと。
けれど。
けれど何処かで。
知らないことなどないと思ってしまっていた。
もしかしたら、俺が知っているのは所詮一部でしかなくて。
知らないことや知らない顔の方が圧倒的に多いのかもしれないと思えば、心か薄ら寒くなった。
「・・・き、た、やま・・・」
「ごめん・・・」
呟く声には力は無く。
何とか呼び掛けた俺の言葉を最後まで聞かずに謝るなんて、そんな些細なことさえもが"らしくない"と感じてしまう。
「ごめん、でも、ダメだ、藤ヶ谷・・・」
その瞳は、先程の真っ暗な瞳によく似ていた。
似ているけれど、少しだけ違って。
歪められた表情。
宙を
僅かに震える肩。
ああ─────・・・
その瞳の中に渦巻くものは。
伝えることは、北山を間違いなく悩ませることだと思っていた。
けれど。
その姿は、ギリギリまで引き絞られた弓の
あと少し力が加わるだけで、均衡は崩れてしまいそうな。
溢れるように弾けて飛び出すか。
それともその場でぷつりと切れてしまうか。
どちらであったとしても、それは決して北山にとってプラスではないだろう。
言葉にした時点で、悩ませる覚悟は何処かで固まっていた。
けれど。
ソファで、所在なさげに小さくなる北山。
その瞳に渦巻くものは。
困惑ではなく。
.
俺には、
悲哀──────・・・
に見えた。
.
512人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
流華(プロフ) - sioriさん» 一番乗りコメント、すごい嬉しいです♪♪やっぱりここを少しだけスクロールすると「作成日時」が残るじゃないですか。その日付を残したくて(笑)素敵な恋!?(笑)んー・・・素敵な恋もそれなりにありましたけど、素敵じゃない恋もたくさんありましたよ(笑) (2021年9月18日 23時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さん、やった!1番(笑)北山くんの誕生日に続編を更新してくれて嬉しいです!そしてやっぱり流華さんの言葉選びが本当に大好き。どんな素敵な恋をしてきたんですか?(笑)ふふ。この先どうなっていくのか楽しみです! (2021年9月17日 18時) (レス) id: 2b4c1e0fcf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:流華 | 作成日時:2021年9月17日 18時