※ ページ38
.
ピッ。
ピッ。
響くカメラの電子音。
ワンショットごとに少しだけ表情やポーズを変えて。
こちらに向けられているカメラを見つめれば、視界の端にはピアノを弾く北山の姿。
カメラ目線を少し外して北山の指先を見つめれば、滑らかに妖しい色香を纏うその指先はひどく淫猥な空気を宿して。
ぞわりと肌が粟立つのを止められない。
ダメだ。
わかっているのに。
でも。
今なら。
俺は、ゆるりと立ち上がり大判の黒レースを手に北山に近付いた。
「藤ヶ谷くん？」
甲斐さんの声は聞こえていたけれど、素知らぬ顔で黒レースを両手で広げて。
ピアノを弾く北山を背後から黒レースで包み込むように抱き締めた。
♪────、「ふ、じがやっ、!?」
音が止まる。
北山の焦ったような声を耳元で聞いて、それを最後に訪れる静寂。
黒レースで北山を隠すように抱き込んで、カメラを睨み付けた。
.
誰にも見せたくない。
誰にも渡さない。
これは、俺のだ─────────･･･。
.
目一杯、主張する。
恐らくは独占欲の塊のような瞳をしているだろう。
それでもいい。
仕事の時だけしか、俺は北山に触れられないから。
腕の中で確かに感じる温度。
熱いカラダ。
この、全てが欲しい。
ピッ。
「藤ヶ谷くん、そのまま抱き込んで。両手で閉じ込める感じね。北山くんは指先そのまま。鍵盤には触れないで浮かせて。そう。いい感じ。」
ピッ。
「藤ヶ谷くん、今度は右側から黒レース越しに北山くんの首筋にキスして。そのまま視線だけこっち。北山くん、右手を藤ヶ谷くんの腕にかけて。」
ピッ。
半ば無理矢理腕の中に閉じ込めたのに、甲斐さんも北山も何も言わない。
そうして重ねられていく枚数。
黒いレースは、そこはかとない妖しさを醸しながら、北山の北山らしい部分を隠すだろう。
頭から黒レースをすっぽりと被せた北山は、膝から下と、肘から先しか見えていない。
抱き締めて、隠して、閉じ込めて。
腕の中に囲ってはみるけれど。
この背中には見えない翼があって、心は好奇心の塊で。
縛り付けることはきっと、北山の輝きを損なうことになってしまうから。
愛しのブドワールの君。
やはり、囚われたのは俺の方だ。
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流華(プロフ) - さゆさん» さゆさん、こんにちは。コメントありがとうございます。表現と描写は、本当に気を遣っている部分なので、そこを誉めてくださると嬉しくて更に頑張ろうと思えます。活力をくださってありがとうございます。今後も頑張りますので、移行後もよろしくお願い致します。 (2021年9月17日 18時) (
レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ユキさん» あははー。良いところで狙って切る癖は、今も健在です(笑)でも、ホントにこのお話はノリとか勢いで書き始めたところがあるので、そんな感じに軽いです(笑)上質と仰っていただけること、本当に嬉しいです♪♪今後もお付き合いくださいませー♪ (2021年9月17日 17時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 言葉の遣い方がとても綺麗で、文字数が多いのに一言一句しっかりと目で追ってしまいます！本当に素敵です！移行先でも楽しみにしています！ (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4e568979a2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - うわ！そこで移行ですか！！！笑 めっちゃ気になりますーー！上質なお話を読んでいたのに「面白いそー♪」って流華さんのノリの温度差に笑ってしまいました笑 続き楽しみにお待ちしてます☆ (2021年9月12日 13時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーん♪♪にゃはは〜だって、狙って切ってますもん(笑)読み返してくれたんですか!？嬉しーです♪♪今回は伏線無しだから、謎とかも無いですけど楽しんでくれたら十分です♪sioriさんが読んでると気合いも入るので!!! (2021年9月12日 12時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流華
| 作成日時：2021年8月11日 13時
