《歌い手》シェアハウスとか聞いてません｡《浦島坂田船》

貴｢言うべきか、言わないべきか。｣ ページ29

弁当を食べ終えて教室に戻ると、咲希が心配したんだよ、どうかしたの？と言ってきた。

大丈夫だし、弁当の件も解決したと伝えると、良かったーと言って笑う。

そのまま午後の授業も無事に終え、今は放課後。

咲希｢Aー！一緒に帰ろっ！｣

鞄を持った咲希が、俺に近付いてくる。

貴｢ああ、分かった。ちょっと待って…。｣

そう言って帰る支度をして、鞄を持つ。
咲希と並んで帰り道を話しながら歩いていると、いつの間にか話題は歌い手の話に。

咲希｢それでね！最近出てきて、今私がすっごくハマってる歌い手さんが、『シング』さんって言う名前なの！｣

目を輝かせて話す咲希。
思わず飲んでいたジュースを吹き出した。

貴｢そ、そうか…聞いたことねえけど、そいつの何処が好きなんだ？｣

咲希｢ん？えっとね、先ず声がすごく多彩なの！それに、性別公開してないところも謎めいてて好きだな〜。後、キャスとかだとファンサービスがすごいの！いっつも、『大好きだよ』とか言ってくれるし！｣

…聞かなければ良かった…。///

咲希には自分が『シング』だと言うことを伝えていないため、これを機に言えるかと思ったんだが、むしろ言い出しにくくなってしまった。

貴｢…そうか、じゃあこれからも応援するのか？｣

咲希｢もっちろん！男の人でも女の人でも、私は『シング』さんのファンだよ！｣

貴｢へ、へえ…。///｣

結局俺が『シング』だとは言い出せず、咲希と別れてしまった。

家のドアを開けて、軽くただいま、と言う。

玄関には知らない靴が二つ並べられていたので、邪魔をしないように上に上がろうとした。

…が、リビングの方で誰かが騒ぐような声が聞こえる。

しばらくすると、リビングから足音が近づいてきた。

…また何か、面倒になりそうだ。

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続きます！

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