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ポケットに手を入れられたまま数分くらい歩いたらパーキングに着いた。

私と繋いでない方の手をポケットから出すと、
すぐに少し遠くの暗くて四角いフォルムの
大きい車がハザードを1回光らせた。

免許もない、私ですら知ってる外車。
さすが芸能人、なんておもって。

固まってたら自然と樹くんが
私のコートとカバンを受け取ってくれて
後ろ置いとくね、と後部座席に丁寧に置いてくれた。

『どうぞ、』

と助手席のドアを開けてくれたけど、
緊張もあって少し乗るのを躊躇した。

すぐその様子に気がついてくれた樹くんが
気遣いの言葉をくれて。
(なんでもお見通しなんだなー)
と思いながら乗り込んだ。

運転席に乗り込んだ樹くんが、
一段と大人びて見える。

私が運転できる人なら
そこまで思わないのかもしれないけど、
乗って、エンジンかけて、
『寒くない？』って声かけてくれて、
ヒーターとか操作してくれて。

思えば、家族以外の車に乗るの初めてに近い。
少なくとも、気になる人の車に乗ったのは初めて。
この歳で、恥ずかしいけど…。

その分、樹くんの仕草一つ一つが
かっこいいなって、きゅんとする。

じゃあ、いこっか！
と樹くんがひとこと言って
同時にゆっくりと走り出す車。
最近はなかなか車に乗る機会もなくて
こっそりわくわくした。

パーキングの料金支払いが
スムーズでかっこよくて。
この束の間のドライブで
私は何回惚れるんだろうか、

そう思った時、

(最後なんだよ、今日)

と、脳内から指令が下る

もう二重人格なのかと疑うくらい
頭と気持ちは正反対に動く。

でも正しいのは頭で出てる答え。

さっきまで繋がれてた右手が急に淋しくなる。
彼の温もりはまだ残ってないだろうか、
自分の左手で右手を握ってみたけど
まるで彼のものとはちがくて。

この関係のゴールへと向かうこのドライブが
急に悲しくなってしまった。

何言か会話をした後、
何故かうまく会話が続かなくて。
多分彼が気を利かせてラジオをかけてくれた。

彼が流れることを知っていたのか分からないけど
割とすぐに、ラジオからSixTONESという言葉が聞こえた。

樹くんの方を見ると、
なぜかなんとも言えない表情をしていて
少しおかしかった、笑

初めて聞く、樹くんのグループの曲。
控えめだった音量を上げてもらって、
聞き入った。