StLtH19 (ページ30)

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Jin Side

何もない1人の夜が、たくさん訪れるようになった。

彼女と別れたからといって、それを紛らわすように友人と遊びまくるのも良かったけどそんなことをしたって現実は舞い戻ってくる。

神「はぁ」

小さな背中を、講義室の離れた場所から見るのがこんなに辛いことだと知らなかった。

言葉じゃ言い表せないほど好きなのに、なんで手を離してしまったんだろう。

・・・Aのため？

神「一番イイ子ぶってんのは俺だよなぁ」

そう。
ただ、Aに拒絶されるのが怖かっただけ。

俺を必要としないAを見たくなかっただけだ。

その時はいつかくると、分かっていたのに。

俺の家にある部屋着も、洗面台に置かれた歯ブラシも、お揃いのマグカップも。

全部全部、別れた日と変わらないままそこに存在してるのにAの姿だけがない。

神「何してんのかな」

俺がいなくても、ちゃんと生きてられるのかな。

神「はぁ」

手を取ったその日からどうやったらAが俺に依存してくれるのかだけを考えていた。

どうやったら隅の隅までも俺のものになるのかだけ、ずーっとそれだけ。

出来ることなら、彼女の記憶から忘れられないもの抜き取って俺だけを見て欲しかったし、他を見れないほどに俺だけに染まって欲しかった。

そんなの、無理だけど。

何度目かのため息を零し、なにか食べようと冷蔵庫を開けるけど前みたいにAの作り置きはないし、彼女が大好きなデザートも置いてない。

神「はぁ」

一番依存してんのは、俺か。

気分転換でもしに、バイクでも乗ろうかと鍵を掴んでマンションを出る。

二つあるヘルメットも、今は虚しいだけ。

神「・・・」

一回、Aを後ろに乗せたかったなぁ。
そんなことを考えたらなんだか外に出るのも嫌になってきて、部屋に後戻りしたらスマホが音を立てた。

宮近だった。
いや、スマホに表示されたのは「宮近」だったけど電話から聴こえた声は確かに玄樹の声。

「じんぐーじ来て！」と玄樹に言われたら流石に行くしかなくて、車のキーを手にした。きっと玄樹と宮近を送ることになるだろうから。

運転席に入るとダッシュボードにAが置いていったものがあるのを思い出してまた溜息を吐く。

三年も毎日一緒に居れば、俺の生活の一部となっていった訳だし。

神「会いてー」