StLtH19 (ページ22)

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PAST Vー６ページ22

ーただいま電話に出ることが出来ません

決まった機械音が聞こえてため息を吐く。

「・・・。」

紫耀、どこにいるの。

いくら掛けても紫耀の声がそこから聞こえることは無かった。

無事に退院して、両親が安心した様子でアメリカに帰った翌日だった。

「イイ子」を演じて、バレエを諦めたふりをしたけど・・・そんなのできるわけない。

リハビリだって二週間で終わらせたのだから。

自分はラッキーだと思いたかった。

奇跡を起こせると信じていた。

家に誰もいないのを確認して、バレエのレオタードに着替える。

数ヶ月前に紫耀と一緒にインタビューを受けた雑誌が机の上に何冊もあって、その横に今までもらった賞やトロフィーがある。

私の生き甲斐だった。

バレエは、私の道だ。

その道が閉ざされるなんて、そんなの許さない。

バレエが出来なくなった私は、私なんかじゃないんだ。

またジーナになればいい。

私はそう思って鏡の中の自分と目を合わせた。

訪れた現実は、残酷だった。

また踊れると信じて疑わなかった。

誰の言葉も信じず、自分の中の奇跡を夢見ていた。

気づいていた時には膝が真っ赤に染まっていた。

足が憎かった。

「・・・っ、」

うまく回れない。

あれほど、滑らかに踊っていたのに。

何度も何度もやっているのに、まるで自分の身体じゃないみたいだった。

回っても回っても体が傾いて、床に打つかる。

嘘だ。

こんなの、嘘だ。

涙がこみ上げてきて、自分にはもう本当に無理なのかとまた首を振る。

違う。

私は、天才バレエ少女だよ。

あんなにたくさん褒めてもらえたでしょ？

こんなの、絶対嘘。

バレエが出来なくなるなんて、そんなの絶対嫌。

何度も何度も同じ動きを繰り返し、何度も何度も、身体を床に打ち付けた。