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彼女の携帯のディスプレイに映った番号は、見覚えのあるものだった。
一体何処でだろうか、と考えながら電話に出れば、聞こえた声に身構えてしまう
『どうも……分かりやすか?』
『沖田さん、ですよね』
電話越しの沖田は「ええ」と返事をし、前にかけてくれたのはアンタだったのか、と含んだように言う。
彼女はそれには何も答えず、彼の要件を聞いた。
『この間、潰れたホームセンターの跡地でちょっとした事件があったんでさァ
そんで、現場に行ったら変な物が落ちてやしてね』
「これ」と沖田が言った直後、チリン、とした音がする。Aは一瞬呼吸をするのを忘れてしまう。
沖田が鳴らしたのは、ソウゴが付けていた鈴だったからだ。
『この鈴が落ちてたんですが……
これ、あの猫のじゃねェですかねィ?』
目敏い男であるため、疑問形で聞いているが確信を得ている。
彼女もそれを感じたのか、下手なことは答えないようにしようと口をつぐむ。
『ま、腐れ縁の嘉で見逃してやりまさァ』
『せいぜい、神威との恋愛ごっこを楽しんで下せェ』
『……恋愛ごっこ?』
聞き返すAに、惚けた声で「違うんですかィ」と挑発的に言う。彼女はムッと唇を結び、仕返しでもしてやろうと鼻を鳴らした。
『……知ってますか?
あの猫の名前「ソウゴ」っていうんです』
『は?』
『近所の家にいたムカつく奴の名前がソウゴだったからソウゴ……』
「本当にその通りですね」と嘲笑するように沖田を笑い、返事を待たずに電話を切る。
歩くたびに心地の良い音色を奏でる彼は彼女の足に擦り寄り、撫でてくれと言わんばかりの甘い鳴き声をあげた
Aはその場にしゃがみ、彼の首についた新しい鈴を揺らす。
抱き上げたその時、主人である神威が帰ってきた。
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さざんか(プロフ) - 更新お疲れ様でした…!そして素敵な作品を本当にありがとうございました!涙が出てきちゃう程良いお話で、凄く忘がたい作品になりました。完結から長らく経ってしまいましたが、出会えて良かったと心から思います。本当にありがとうございました。 (2022年3月13日 3時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
今日花 - とても良い作品でした。神威が不器用な、けれど優しいところに惹き付けられました。最後は結婚という結果で思わず笑みが溢れます。心に残る作品でした。 (2017年9月19日 18時) (レス) id: 53c7e05c46 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ななさん» ありがとうございます! 大好きとは、勿体無いお言葉!! 神威は難しくて苦戦していましたが、ななさんにそう言ってもらえたので、そんな苦悩は吹き飛びました! コメントと閲覧、本当にありがとうございます( ´ ∀`) (2017年8月12日 10時) (レス) id: 30ed3dcdf9 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 完結おめでとうございます!!とても面白くて素敵なこの小説、大好きです^^これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月6日 1時) (レス) id: f0f39f84a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - RTtk46NmHahsgrzさん» ありがとうございます! こちらの作品、悩みに悩んで進めて行った作品なので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。いつかまた、読み返してくださるとありがたいです^^ 他の作品も、もし良ければ読んでほしいです! また好きになってくださいな!! (2017年8月4日 10時) (レス) id: 731ff239df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年6月19日 20時