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錆びついた鉄柵に乗っかるくらい、銀時は月に近付こうとした
それくらいで距離が変わるなど有り得ないことは知っているのだが、大きな満月を目の前にしているために、気持ちが駆り立ってしまったのである
もしかしたら届くかもしれない、なんて馬鹿なことを考えた彼は、月に向かって手を伸ばす
それを下から偶然見てしまった一人の女は、大慌てで廃ビルの土埃塗れの階段を駆け上がった
『何してるんですか!!』
銀時に血相を変えて近寄り、身体を思いっきり引っ張れば二人して地面に倒れこむ
彼は何が何だか分からず、呆然と女を見つめていた
『死んじゃだめです!
貴方はまだ若いんだから、もっと、その……』
手振りを慌ただしく動かし、必死に何かを伝えようとする
銀時はその意図が分かり、自分が自ら命を絶とうとしていると勘違いされた訳なのだ
彼は吹き出し、腹を抱えて女をケタケタと笑う。女は男の突然の爆笑についていけず、ただ口をあんぐりと開いていた
『してねェ、してねェ
死のうとなんてしてないから』
「あー、可笑しい」と軽く咳き込みながら落ち着こうとする。女もようやく理解できたのか、途端に顔を真っ赤にして掌で覆う
「すみません」と蚊の鳴くような声で呟いた
『いや、いいよ。
ありがとな、なんか』
『いえ、本当に、忘れて下さい』
俯いたままの女に、銀時は顔を上げさせようと空を見るように言う
おずおずと見上げれば、女は月と同じくらい目を丸く見開いた
『綺麗……』
『だろ? ここ、俺の特等席なの』
「内緒な」と人差し指を口に持っていき、悪戯小僧のように白い歯を見せる
その時、彼女の心臓が、とくんと柔らかな心音を奏でた
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さざんか(プロフ) - 更新お疲れ様でした…!そして素敵な作品を本当にありがとうございました!涙が出てきちゃう程良いお話で、凄く忘がたい作品になりました。完結から長らく経ってしまいましたが、出会えて良かったと心から思います。本当にありがとうございました。 (2022年3月13日 3時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
今日花 - とても良い作品でした。神威が不器用な、けれど優しいところに惹き付けられました。最後は結婚という結果で思わず笑みが溢れます。心に残る作品でした。 (2017年9月19日 18時) (レス) id: 53c7e05c46 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ななさん» ありがとうございます! 大好きとは、勿体無いお言葉!! 神威は難しくて苦戦していましたが、ななさんにそう言ってもらえたので、そんな苦悩は吹き飛びました! コメントと閲覧、本当にありがとうございます( ´ ∀`) (2017年8月12日 10時) (レス) id: 30ed3dcdf9 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 完結おめでとうございます!!とても面白くて素敵なこの小説、大好きです^^これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月6日 1時) (レス) id: f0f39f84a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - RTtk46NmHahsgrzさん» ありがとうございます! こちらの作品、悩みに悩んで進めて行った作品なので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。いつかまた、読み返してくださるとありがたいです^^ 他の作品も、もし良ければ読んでほしいです! また好きになってくださいな!! (2017年8月4日 10時) (レス) id: 731ff239df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年6月19日 20時