慈愛に満ちたおかあさま

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昔々の話である。

人が人を愛する想いから生まれた神がいた。

その慈愛の女神は、人の子を愛し、日ノ本を愛し、神々をも心より愛していた。

しかし、戦国の世も終わりに近づいた頃のことだ。

愛する人の子達の、あまりにも強く、多すぎた負の念に、慈愛の女神はくずおれてしまったのだ。

愛した人の子達を、愛した日ノ本を、慈愛の女神は天災となって襲ってしまったのである。

ようやっとそれが収まり、自我を取り戻した慈愛の女神は、両手で顔を覆って咽び泣いたという。

慈愛の女神は、『神である自分が恐ろしくなってしまったどうか人間として日ノ本へ落としてほしい』と、高天原の神々に泣きながら願った。

しかし、慈愛の女神を愛してやまない神々は、慈愛の女神が人として死することを良しとしなかったのだ。

神々は、慈愛の女神に人間の器を授けた。
しかし、慈愛の女神は神のままだった。

それに気づいた慈愛の女神は、せめて傷つけてしまった人の子達を少しでも癒そうと、身寄りのない子どもを皆育てることにしたのだという。

その慈愛の女神の名は、明光愛神(あけひかりめごのかみ)。

あらゆるものに、母と呼ばれる者なり。執筆状態：完結