浦島坂田船でただただ妄想を膨らませるやつ【短編集】 (ページ9)

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浮気【坂田】ページ9

突然ですが、彼氏が帰ってきません。
仕事に行くって言って朝出て行って、お昼の連絡で途絶えてます。

事故ったのかな…もしかして誘拐？！
だってあのさかたんだよ？！

心配でそわそわしながらソファーに沈む。
時計の針は0時ちょっとすぎたくらいをさしている。

もういいよ、寝るよ。そう思って寝室に向かおうとした。

ｶﾞﾁｬｯ

「ただいまぁ～」超小声で入ってきたさかたん。私が寝てると思ってそっと入ってきてくれたのかななんて思ってしまう。

『遅い』

「それより先に言う言葉は？」

『おかえり』

「ん。いい子」なんていいながら私の頭をなでてリビングへ向かったさかたん。

…え。
気のせいかな、考えすぎ？

知らない女の人の香水の香りがふわっとした。
私のとは違う全く違う甘い甘い香り。

この時間になったのはその女の人とずっといたから？
連絡してくれなかったのはスマホ見るほど余裕がなかったから？
私のことはもういいんだ。好きだとか愛してるだとか全くのウソだったってこと？
考えれば考えるほど嫌なことばっかり浮かんで息が苦しい。
涙すら出ない。

忘れて寝よう。そうだ。
ふらつく足に鞭を打って寝室へ向かおうと思ったら
「もう寝るの？」

さかたんが声をかけてきた。
私は答えるとかそれどころじゃない。

溢れすぎた想いが爆発して涙が溢れて崩れ落ちてしまった。

『ふぅっ……っ…ふっ』

「ちょっ！A！！大丈夫？どうしたの？」

『こっちこないで…っ』

匂いなんてかぎたくなかった。

「なんで？どうしたの…」
それでもそばで背中をさすってくれるさかたん。

もう言っちゃおう。

『浮気…しちゃいゃ……』

「え？浮気？なんで？」

『香水の、においする…』

「え、うそ」なんていってくんくん腕の匂いを嗅いでるさかたんは本当に犬みたい。

「あーゲリラで飲み会誘われて、飲めない同僚が間違えてお酒飲んじゃって送ってってたの…ごめんなぁ…」

よかった…よかったぁ…
でも…『連絡くらいしてよ…ばか』

「ごめんな、携帯お昼に充電なくなっちゃって…ごめんな…不安にさせたなごめん…」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれるさかたん。ずっと謝っていて私はこんな大事にしてくれる人を疑ってたんだ…

『先にお風呂入って…』

「ほんまやな、ごめん、この服も捨てよかな、すぐ上がるから待ってて？」

『うん！』

さっきまでの不安なんてすぐになくなってしまう。流石だ。私の彼氏。だいすき。