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□Halloween ページ18

「こんばんは〜!トリックオアトリート!」
「…は!?」

都合よく玄関先の掃除をしていたからか、ちょうどいい位置で固まるめいちゃん。アポ無しな上インターホンも鳴らさなかったからめちゃくちゃ怖かっただろうな。

「いやっ、はあ?どゆこと?どうやって…?」
「合鍵だよ。びっくりした?」
「びっっっくりするだろ普通に!ねえほんと心臓止まるかと思ったんだけど!」
「とりあえず中入れてよ、寒い。」

問いかけに食い気味に反応するめいちゃんを無視して玄関へ上がり込む。


「寒いって、まさかその格好のまま来たとかじゃないよね?」


まさかって。


「そうだけど?」
「馬鹿じゃん!」

今日のコーデは即席キョンシー。そこらのバラエティショップに売ってあったペラペラ生地なので風通しがよくて困っちゃう。本当はちゃんとしたやつ買いたかったんだけどいかんせん仕事終わりにきたものだから、多少のクオリティの低さは目を瞑って貰いたいところ。

ていうかハロウィンなんだから仮装のひとつやふたつするでしょう。


「こんな時間にそんな格好で出歩いちゃダメでしょうが!」
「大丈夫だよ今日はみんなこんなんだもん。」
「ちーがーう!変な人に捕まったらどうすんのって!」
「めいちゃんは心配症だなあ。」
「え〜?これって俺がおかしいの〜…?」

前回のお家から引き続きクジャクとタムタムが鎮座するリビングを抜け、すっかり慣れ親しんだソファへ腰掛けた。なんでちょっとオシャレな絵とか飾ってるのにこの2つを一番目立つとこに置いてるの?


「はい、じゃあトリックオアトリート!」
「トリックで。」
「だめ。」
「だめとかあるの!?」

あるよ。お菓子隠し持ってるの私知ってるんだからね。
頑なにキッチンへの道を封鎖するめいちゃんを振り切ってワゴンを漁ると、いつのか分からないもぎもぎフルーツが顔を出した。


「ほらぁやっぱりあるじゃん!…っわ、」


してやったり顔で後ろを振り返る。


「A。」
「な、なに?」


すると狭いキッチンの中、異常に距離の近いめいちゃんがそこいて、驚愕のあまり喉が引き攣る。無言のままジリジリと距離を縮められ、あっという間に私の背中は壁へ張り付いてしまう。

僅かな隙間を腕で塞ぎ、ひと言。



「トリックオアトリート。」

笑みをたたえる口もととは裏腹に、目じりはいたずらっぽく弓なりにしなっていた。

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作者名: | 作成日時:2022年8月29日 23時

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