□え!? ページ14
めいちゃんの引越し祝いに来ていたある日のこと。
「…あら。」
まだ家具の少ない部屋に響く、無機質なインターホンの呼び出し音。
現在家主は絶賛入浴中で、とはいえ無視をするわけにもいかずしぶしぶテーブルを拭きあげていた手を止めた。
「はーい?」
『あ、もしもし?』
「は…もしもし?」
インターホン越しにもしもしってなんなの。ていうか令和の昨今でもしもしって伝わるの?
『すみませんあのー、国税局の者なんですけど。』
「国税局!?」
急にそんな大層な。
顔を伺おうにもカメラを指で抑えているのか画面は真っ暗だ。イタズラにしては悪質すぎるそれに背筋がぞっと冷えていく。
『脱税されてますよね?』
「え!?ちゃんと納めてます!!多分!!」
『国から調査の依頼が来てて。……ん?なんかさっきから女の声せえへん?』
『これワンチャン彼女さんじゃ…。』
何人かで来ているようで、後ろに控える人に話しかける声がする。しかして脳内大パニックな私にそんな会話が聞こえるはずもなく、音を立てて開いた浴室の扉へ駆け寄った。
「めいちゃん!!」
「うわ顔怖い!!なに!?」
「脱税してる!?」
「してないよ!?」
***
「金城さん!?」
「え、Aちゃん!?」
玄関でこっぴどく叱られていた様子だったのでドッキリかー、最近の人は凄いな、YouTuberじゃあるまいし…と安心していたのもつかの間。しょぼしょぼと背中を丸めながら部屋へ入ってきたのはなんと金城敬樹さんその人だった。
「AGeroさんのこと知ってんの?」
「な、なに?ゲロさん?」
「貴重なGeroを知らん知り合いやねんからやめーや!」
…なんのご縁か、めいちゃん周辺の人とやたら繋がりあるな、私。日本って狭いなあ。
軽くご挨拶をいただいた山ちゃんさん、たっくみさんはそれはそれは礼儀正しい子たちで、先程の国税局のくだりにGOサインを出した人と同一人物とはとても思えない。
「へー凄い偶然もあるもんやなあ。」
「ほんとっすよねぇ〜。」
「じゃああのときめいちゃんが言うてた子ぉて…、」
「うわあああ!!」
「めいちゃん!?金城さんが!!」
奇声を上げながら金城さんに肘鉄するめいちゃん。それを見てただ笑い転げる2人。
なにこれ、地獄?
309人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:哀 | 作成日時:2022年8月29日 23時