平野様がご指名です。After Story 6

職業病 ページ44

〇職業病
「ごめんね！遅くなっちゃった！」

「大丈夫やで」

久しぶりのデート

待ち合わせ時間の10分前

＜ごめん、おそくなる＞

患者さんに何かあったんだろう

俺のことなんて気にしなくていいのに

＜大丈夫 急がなくていいからね＞

もちろん既読はつかないんだけど。

Aが頑張ってると思えば

待つのなんて全然苦じゃない

何をするわけでもなく

ぼーっと立ち尽くしてる

どれくらい経っただろう

「紫耀っ」

走ってくる華奢な女

「もー、急がなくていいって言ったのに笑」

デート用に買ったコートがとても似合ってる

「いや！1時間も待たせちゃってほんと申し訳ない汗」

1時間も待ってたのか

そんなの気にならないくらい

俺はAが好き

「患者さん大丈夫？」

「うん！発作で苦しそうにしてたんだけど、、」

そこから、ベラベラと専門用語をまじえて

説明し始める

「へー！お疲れ様やな！」

「ほんと回復してよかったよ！」

俺には全く理解不能やねんけど、笑

「で、紫耀は？」

「俺？

いや、特に何も笑

岸くんがいじられてたくらい笑」

「もー、岸くん好き〜笑」

ヘラヘラ笑うA

さっきまで人の命救ってたんだよなぁ

しみじみと尊敬の念を感じる

「あ！新作飲みたかったの！！

ねえ、飲んでいい？」

「別にいいけど、笑」

またまた俺を放置してスタバへ

「お待たせー」

ちゃっかり二人分買ってきてくれるAは

やっぱり可愛い

まあふつーは彼氏がやることなんやろうけど笑

「ありがと」

「あー、甘いものってやっぱりいいね！」

疲れた顔を一切見せないAに少し心配になるけど

幸せそうでこっちも嬉しくなる

次の瞬間までは。

ーキキーッッツ

ー危ないっ！！！！！

俺らの目の前を歩いていた親子が

まるでスローモーションかのように宙に浮いた

あぁ、トラックが突っ込んできたんだ

そう認識するのにそう時間はかからなくて、

それと同時に

「A、大丈夫？！」

隣を見れば

放心状態のA

親子のもとには

周りの人が駆けつけて

救急車を手配してる

だから申し訳ないけど

俺はAをどうにかしないと

「しょお、、っ、、」

小さな肩が小刻みに揺れる

「おいで」

包み込んでやるけど、涙は止まらないし

おまけに、息まで乱れてきてる

「A、大丈夫大丈夫

俺、ここにおるよ？」

「怖いよ、、怖い、、」

小さく漏れる本音

あぁ、俺が守らなきゃ

職業病 2→←タイムスリップ 2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す