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｢……こんなものかな｣
[丁度いいね]
紙を油に浸し、そっと刀身に沿わせる。薄く、均一に、塗り残しやムラがないように細心の注意を払わなければならない作業だ。
頻繁に手入れをしに来れるわけではないし、気持ち多めに塗っておいた方がいいだろうか。
｢……はぁ｣
[お疲れ様、しばらくは手入れの必要もなさそうで安心したよ]
刀身を鞘に収め、柄を戻していく。
あっという間に日本刀の姿を取り戻したそれは、作業前とは比べ物にならないくらい清潔さを取り戻していた。
鞘から抜いて目釘の具合を確かめ、刀の状態を確認する。
刀本体の美しさを差し引いても、我が仕事ながらなかなか良い。
｢……君は美しいなぁ……E.G.Oとはまた違った魅力がある｣
[……あんまり言われると、その、照れるんだけど]
｢君が一体どれほどの修羅場を乗り越えてきたのか、私達には想像もつかないんだろうな。もし君が話せたら、聞きたいことが沢山あったのに｣
[君がまた俺の声を聞いてくれたら、俺の知っていることは全部教えてあげるのに]
日本刀は崩壊前の旧世界に存在した1国家に特有の武器だという。
確か｢壊れゆく甲冑｣も同じ国のものだったはず。
防具としての甲冑と、斬るものとしての日本刀。
相反する2つのアブノーマリティが1つの施設に存在するなんて、とんだ偶然だ。
｢……よし、作業は終わりだ。次の手入れまで私が生きていたら、また来るよ｣
[待っているよ、君が死んでも、どこに行っても。俺は君を信用しているから]
持ち込んだ荷物をまとめて、入室時と同じように切り株に日本刀を横たえる。
この保管方法も何とかするべきだろうな。
[だから早く、俺の冷えきった身体に触れて]
｢！｣
収容室から出ようとした瞬間、何かに後ろ髪を引かれるような感覚があった。
もちろん物理的に何かが起きたのではなく、風に吹かれた程度の抵抗を感じただけだ。
｢……きの、せい？｣
薄ら寒い心地になり慌てて収容室を出る。じわりと滲む汗が酷く不快だった。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (
レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年7月11日 0時
