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「花畑に沈むもの」 ページ32

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その収容室は鮮やかな色彩で埋め尽くされていた。
1歩踏み入れる毎に足元の花が散っていくが、枯れた端からまた咲く。ここは常春の理想郷だった。


「やあ、君が「花畑に沈むもの」だね」
[こんにちは。俺は"ひとらんらん"と言います]


収容室の中心には切り株が2つ並んでおり、そのうちの1つに無造作に日本刀が置かれている。
風雨に晒されることの無い収容室だからこその保管方法だが、もう少し何とかならないものかとは思う。


「少し触らせてもらうよ。手入れをしに来たんだ」
[ありがたいなぁ。ここに来てから誰も手入れをしてくれてないんだ]


持参した大きめの板は部品が転がっていかないように縁が付いているものだ。
切り株の上に板を敷いてその上に日本刀を置き、もう1つの切り株に腰掛ける。
まじまじと見つめれば、本当に見事な刀であることが分かる。
私が得意としているのは銃器の類だが、近接武器にもある程度の造詣はある。
だからこそ、この薄汚れた日本刀が許せなかった。


「1度バラすけど、掃除し終わったら戻すから」
[もちろん。君なら信用出来るから好きにして]


鞘から抜き放ち、目釘を抜いて柄と刀身もバラす。
この施設では物資の都合で鞘の中まで清掃することは不可能である。
故に鞘の手入れは目立つ汚れを軽く拭う程度になる。
柄も同じく、大した手入れが出来ないのが口惜しい。
刀身はお手本のようなカーブを描いており、均一な刃文は素人目にも分かるほど美しい。
油と錆の浮いたこの刀は、収容以来1度も手入れをされた記録が無い。
そもそも日本刀の手入れの仕方を知っている人間もそうそういないからだ。
軽く刀身を拭い、打ち粉をはたいていく。もう一度拭えばくすみと錆は消え失せ、本来の輝きを取り戻した。

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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時

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