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練習場から出てきた、ベースを背負った後姿。
隣で腕を組んでいる女の子に顔を寄せて耳打ち、バイバイと手を振りながら離れていった。
ふっと振り返って私の姿を見つけ、眉を下げる。
何も言わず、「寒いのに」と抱きしめてくれた。
「お待たせ、ごめんね待たせて」
「…いきなり連絡したのは私の方だから」
「そういえば、通ったんだってねオーディション」
「うん。うみと作った曲CDになるみたいだよ」
「すげぇじゃん…だから嬉しくて泣いてるの？」
ぱた、と音を立ててマフラーの上に落ちた。
拭われること無く流れ続ける涙が冬の風にさらされ、私を芯まで冷やしていくよう。
「助けて欲しい？」
聞いたことのあるセリフ。
そして思い出した。
この質問に頷いてしまったら、もう私は。
分かっていた。
分かっていて、頷いたのと、うみが顔を傾けたのは同時だった。
温かい唇が触れる。
吐息を近くで感じた。
顔を離すと、想像以上に悲しそうで同情を湛えた瞳。
冷たいファーストキスだった。
海斗を好きなままの心が、取り返しのつかないほどに抉られる。
失恋した時よりも辛いのはなぜだろう。
「俺、弱ってる子に付け込むほど鬼じゃないって言ったけど…撤回する」
「…」
「そんな顔してたら、もう無理だよ」
ぎゅっと抱きしめる力を強めるから、
私も手を回してそれに応えた。
温かくて私を求めてくれる人。
「うちにおいで、A」
初めては海斗以外ありえないって、なんか、勝手に思っていた。
でも。
海斗に求められないのなら、こんなものに意味なんてない。
待ち続けても私が苦しいだけだから。
息の仕方が分からない。
人生二度目のキスは、シーツに沈み込みながらだった。
絡まった舌が、溶けてしまうように甘い。
うみって思ったより筋肉があるんだ。
海斗以外の男の人に触れられている。
胸が熱くて苦しくて、痛みからいつまでも逃れられない。
「うみ、」
「今だけでいいから、海人って呼んで」
「え？」
「お願い」
「でも…」
「…あだ名で呼ばれると萎える」
目が合うと、思ったよりも、必死で余裕のなさそうな表情。
ただその理由を理解する余裕なんて私には無くて。
ひたすら、うみの教えてくれる通り、本能に従って流されるだけ。
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N11(プロフ) - maminaさん» 初めまして、コメントありがとうございます。揺らぎからですか！引き続き読んでくださっているようで、感謝しかありません。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました！公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (
レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - あさん» 初めまして、コメントありがとうございます。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました！公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - キさん» 初めまして、コメントありがとうございます。泣きそうになりながらなんて…！とても嬉しいです。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました。公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
mamina(プロフ) - 初めまして。揺らぎから大好きでLost&Foundも毎回楽しみに読んでました。#2に続いてまつくのダークサイドみれるのかと思ってドキドキです！宜しければパスワードを教えて頂きたいです。宜しくお願いします。 (2021年3月7日 21時) (レス) id: 9fd2043a8e (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初めまして！最近からLost & Found読ませていただいています！よろしかったら#2のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年3月7日 20時) (レス) id: 89732c56da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N11 | 作成日時：2021年2月12日 0時
