ロンリーオンリーパラダイス

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「えっ…と。好きって言うか、この雑誌、読みたくて」

しどろもどろになりながら、とりあえず言い訳めいたことを言ってみる。

「じゃあ何で3冊も？」

藤ヶ谷くんに、ずばって聞かれて答えられない。

「隠さなくてもいいのに。
男から見てもかっこいいと思いますよ、ユウタ」

「やっぱり？！」

思わず食い気味に言った私を見て、藤ヶ谷くんが面白そうに笑う。

「あ、いや、あの……本当は」

「本当は？」

「大好き、なんです。ユウタが。
たぶん藤ヶ谷くんが見たら引くくらい」

「別に引かないと思うけど」

「知らないからだよ！オタクの実態を！」

思わず力を込めて言った私を見て、藤ヶ谷くんは堪えきれなくなったみたいに、あはは、って白い歯を見せて笑った。

「Aさん……Aさんって呼んでもいいかな」

「え？いい、けど」

「ね、お腹すいてません？残業のお礼にご馳走させてください」

え？

え？

今私藤ヶ谷くんにご飯に誘われてる？

しかもオタクなことばれたのに？


雑誌を抱えてしゃがんだままの私の目線に合わせて、藤ヶ谷くんもしゃがむ。
　
「駄目、ですか？」

覗きこむように、ちょっと低い声でそんなこと言われたら。


「だ、だ、」

「だ？」

「だめじゃ…ないです……」


ちょろいなあ、私。

でもほら、あれよ。

アイドルを愛でるのと似たような感じかも。

かっこいい後輩とご飯食べて目の保養をさせていただこう、っていう気持ち。


「よし、来まり。行こう」

「あ！じゃあ、行きたいとこ！あるんですけど……」

「お、何だろ？いいですよ、そこにしましょう」


私が藤ヶ谷くんを連れて行ったのは、元々今日行こうと思っていた魚介系スープのラーメン屋さん。

「ここ？ラーメンでいいんですか？」

「ラーメン『が』いいんです」


オタクだってばれた訳だし、そもそも8つも上の私といい雰囲気のお店行ってもしょうがないし。

それなら楽しみにしてたラーメン食べられる方がいい。


「金曜日はラーメン食べるって決めてるから」


私がそう言うと、藤ヶ谷くんが、ふふって笑う。


「Aさんって面白い」

「変だって言っていいよ」

「変じゃない！むしろ、理想…」

「え？」

「あ、いや。とりあえずラーメン食べましょう」


藤ヶ谷くんが楽しそうに、ラーメン屋さんののれんをくぐるから。


私も後に続いた。

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