ロンリーオンリーパラダイス

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みっくんが入って行ったのは、よく雑誌にも載っているところで、フレンチを居酒屋メニューにアレンジして、お手軽な価格でお酒と一緒に楽しめるのが売りの最近すごく人気なお店だった。

店内に置かれた水槽には熱帯魚が光りながら泳いでる。

「み、みっくん。ここ確か予約取るの大変なんだよ」

「いーから」


「お客様、申し訳ございません。本日はご予約でいっぱいで……」

ほらほら。

「って、北山さんじゃないですか！」

「どーも」


顔パスみたいに入れてもらえて、しかも奥の奥のVIPルームみたいな席に通される。


え？


みっくんて、何者？


席に座ると、私が何者？って思ってるのを見透かされたみたいに、名刺をぽん、って渡された。

そこには、有名なコンサルタント会社の名前と、北山宏光、と書いてあった。

名刺の裏には、このお店を含むたくさんの有名なレストランやカフェの名前がずらり。

「うちの部署、飲食店のトータルプロデュースしてんの。コンセプト、外観、内装、メニュー、そういうの全部」

「あ！もしかして、このお店も？」

「そーそー」

そこまで話した時、お店の人が飲み物と何品か料理も運んで来てくれた。

「予約いっぱいですげーじゃん」

北山さんが運んでくれたスタッフさんに笑いかけると。

「北山さんのおかげっすよ。スタッフもみんなこの店が大好きです」

そっか、ってみっくんがちょっと首を傾げて笑う。

会釈をしてスタッフさんが出て行くと。

みっくんが笑ったまま、目を伏せた。

「ここ手がけたの去年の話」

「そうなんだね」

「そっから変な派閥争いに巻き込まれて、さ」

「派閥争い？」

「よくあるやつだよ。次期社長を狙う副社長派と専務派、みたいな」

よくある、のかは分からないけど。

うちの会社でもそこまで激しくはないけど、ちらりと耳に入ったりはする。

「別に俺はどっちにもついた覚えなくて。ただ一生懸命好きな仕事してただけなのに。
総合的なプロデュースじゃなくて急に売れてないラーメン店の立て直しばっかりまかされるようになって」

みっくんを見ると、きれいな色のお酒を、ごくん、と飲んだ。

「やりたい仕事全然できなくなって。
やる気もなくしかけてた時に、はっしーさんのインスタ見た」


急に出てきた自分の名前に、びっくりする。

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