漆拾 ページ38
「あ、あの、A様、落ち着いてください…！」
そう言って私の手に自分の手を重ね、制止の声をあげる椿。
私はハッと我に返って椿を見る。その手は私から溢れた殺気が原因で、カタカタと震えていた。
ああ、クソ、冷静さを欠くなんて私らしく……まぁ、一概にない、とは言えないが、関係ない椿を巻き込むのはダメだ。
私は椿の手をゆっくりと解きつつも、羂索から目を離さず警戒する。
「相変わらず凄まじい殺気だね。そこの彼には辛いんじゃないかい？」
『……椿、お前は下がれ』
「あ、は、はい」
そうして椿が部屋から離れるのを見送ると、私は羂索の正面に座り込み、前置きも無しに『何の用だ』と聞いた。
「もう少し歓迎してくれてもいいじゃないか」
『茶は出してやっているだろう。早く言え』
「そう急かさないでよ。最近どうだい？心のキズは」
ピキリ、と青筋が浮くほど拳を握りしめる。
呪符のせいで術式が効かないなら撲殺すればいいんじゃないか？いや、それではダメだ。呪いは呪いでしか祓えないのだ。呪術を使わずにこの男を殺せば、死後呪いに転ずる可能性がある。
羂索は呪術以外では殺せない。だが、奴は私の極の番を跳ね返せるほどの呪詛返しが付与されている呪符を持っている。現状この男を殺すのは、不可能に等しい。
……あくまで”殺す”という手段を取るとするならば、の話であるが。
『…質問しているのは私の方だ。用件を言え』
「取引さ」
単に煽りに来た、ぐらいの返答を予想していた私は、『は？』と自分でも間抜けな声が出る。
『取引だと？一体何の？』
「おや、心当たりくらいはあると思っていたんだけどね」
心当たりなんて。そう返そうと思ったが、あるものが脳裏に浮かび、吐き出しかけた言葉は喉元で止まる。
そうだ、と何故か数百年経っても薄れていない前世の記憶を探る。
この羂索という男は、直接的には書かれていなかったがあるものを探し、見つけ出していた。わざわざ海外まで赴き、三度目の星漿体の同化を見送ってまで探していたものを、私は持っている！
『────”獄門疆”、か？』
「なんだ、やっぱりあるじゃないか、心当たり」
かつて天狐と旅をした時に立ち寄った寺で手に入れた呪物、獄門疆。当時は気まぐれだったが、こうなる未来はなんとなく想像ついていた。
いや、それとも案外、この状況を見越した上で私は獄門疆を拾っていたのかもしれない。そんな周到さが自分にあるとは思えないが。
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うさちゃん(プロフ) - ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きです！だいすこ。続き楽しみに待ってます (3月27日 11時) (
レス) @page42 id: bdc57886de (このIDを非表示/違反報告)
ファナやん - おもしろいです!可能なら原作軸や懐玉編もみたいです! (9月10日 15時) (レス) id: 3812986166 (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - 面白すぎて何回も見返してます！更新再開してほしいです…頑張ってください！！ (8月7日 14時) (レス) @page42 id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - コメント失礼します！私愛され大好物なので嬉しいです！呪術廻戦のキャラ全員推しなので嬉しいです！更新頑張ってください！ (6月24日 10時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
有栖 - めっちゃ面白いです。更新頑張ってください。(*≧∀≦*) (2023年2月5日 15時) (レス) id: e77b6774d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蝋燭 | 作成日時：2021年10月1日 23時
