・ ページ15
『はー……疲れた………』
7件もの激務を数時間で終わらせるという快挙を成し遂げた私は、屋敷の前で一度返り血などを落とし、門を開ける。
椿はもう寝ただろうか、もう丑の刻辺りだろうからな。
そう思っていれば、向かいから小さな灯りが近付いてきた。
「A様、お疲れ様です。お風呂とお夕食、どちらにいたしますか？」
疲れている私を想っているのか、凪のように落ち着いた声で尋ねる椿に「風呂」、とぶっきらぼうに返す。私の返り血の付いた羽織りなどを受け取ると、椿は踵を返して行った。
『…………酒、飲みてー……』
空に輝く白い月を見上げて、そう呟く。今日は月見酒だな。
‥‥‥‥
湯水を浴び終え夕飯をかき込んだ後、昼に天狐と猫魈が暴れて二次被害を受けた庭園の方の縁側で、私は酒を嗜む。やっぱ酒精がないとやってらんねーぜ！！！！アルコールありがとう！！！！
酒器から猪口に酒を注ぎながら、酒の作り主に感謝する。ホント、非術師を見下す御三家の奴等は一度農民の真似でもしたらいい。自分達の衣食住がどれだけ支えられているかを身をもって分かるはずだ。
「お、帰ってきてたんじゃな」
『……天狐か』
腕を組んで狐目を細めたそいつを、私は横目で見る。今は人か。狐の姿なってくんねーかな、アニマルセラピー要員だろテメェ。
「随分と疲れておるようではないか、窶れてるぞ」
『昔もこんなもんだったろ』
「それは主が自身の肉体に気をかけてなかったからじゃろう」
旅をしていた時の事を指摘され、私は目を逸らしながら苦笑いを浮かべる。あの頃は食べなくても餓死はしないからと頻繁に食事を欠いていた。一緒にいた奴がいた奴(呪霊)なので、そういったサイクルが狂っていたとも言える。あ、つまりお前のせいじゃん(責任転嫁)
「……いや、主の落ち度じゃよ」
『見え見えかよ、つまんねーな』
長年の付き合いというものだろうか、考えている事は全てお見通しのようだ。
なんとなくイラッと来たので、術式の影で引き寄せ無理矢理隣に座らせる。目を瞠る天狐の手の上に酒器を置き、空になった猪口を其方へ差し出した。
『晩酌しろ、どうせ暇だろ』
「……はァ、年寄りは煩わしくて敵わんな『あﾞ？』……吾も暇を持て余していた所だし喜んで酌をしよう」
……この手の平返しの素早さだけは、椿とそっくりなんだよなぁ。いや、違うか。椿は天狐の受け売りか。揃って阿呆だな、アイツら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2208人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「呪術廻戦」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うさちゃん(プロフ) - ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きです！だいすこ。続き楽しみに待ってます (3月27日 11時) (
レス) @page42 id: bdc57886de (このIDを非表示/違反報告)
ファナやん - おもしろいです!可能なら原作軸や懐玉編もみたいです! (9月10日 15時) (レス) id: 3812986166 (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - 面白すぎて何回も見返してます！更新再開してほしいです…頑張ってください！！ (8月7日 14時) (レス) @page42 id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - コメント失礼します！私愛され大好物なので嬉しいです！呪術廻戦のキャラ全員推しなので嬉しいです！更新頑張ってください！ (6月24日 10時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
有栖 - めっちゃ面白いです。更新頑張ってください。(*≧∀≦*) (2023年2月5日 15時) (レス) id: e77b6774d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蝋燭 | 作成日時：2021年10月1日 23時
