拗らせ恋。【登坂広臣】１ (ページ28)

今日:7 hit、昨日:8 hit、合計:126,830 hit

_26 ページ28

.

「誰？それ広臣のスマホでしょ？」

＂広臣＂＂美奈子" と名前で呼び合うくらい仲のいい方なんだ。

『広臣...、に、返しといてくれますか。忘れ物みたいなので』

そして私の負けず嫌いが悪い方向に転じた。

なぜかすごく悔しくて、せめて少しだけでも彼に近づいた気分になりたかったから。

「...場所教えてくれる？取りに行くから」

少し黙っただけで、特に慌てる様子もない。

余裕がある、といった具合。

『とさ...広臣とは、どういう関係なんですか』

「...彼女だけど。3年前からの」

やっぱり。

登坂さんには、ちゃんと愛する人がいたんだ。

それが分かっただけでも、私は運が良かったのかもしれない。

あのまま、騙されるよりは。

場所を伝えてスマホを受け渡すと、彼女は私の事なんて気にする様子もなくそのまま車に乗り込んだ。

明るい髪のよく似合う、美人だった。

登坂さんがテレビで言っていた好きなタイプのドストライク、といったところ。

彼女が姿を消した途端、無性に登坂さんに腹が立ってきた。

だけどやっぱり、嫌いになれないのが私の悪い所。

『あー、やっぱ、知りたくなかった...』

ドアの前に座り込み、自分の顔を手で覆う。

...恋人に想いを伝えるって事は、女遊びをやめるってことなのかな。

そんなこと、今更考えてもどうもならないか。

『...気持ち、切り替えなきゃ』

メールの欄から＂登坂広臣＂という文字が消えたのは、私なりの決意だった。