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子供は海へ舟は水ーその34 ページ28





「…部長。幸村部長。」




「なんだい?」




「俺が、戻ってしまうように見えるんですか?」




「…見えるから言ったんじゃないか。」




おかしなことを聞くなと言わんばかりに困った顔をされれば、夕暮れに塗りつぶされても尚深く青い闇のような髪が揺れる。


夜みたいな澄んだ目をじっと見つめたら、さっきの決心は確信に変わり、俺は部長に「いいですか」と子供に言い聞かせるように指を立ててみせた。





「確かに跡部様の元へ帰る準備は出来てます。




でも、それ以上に立海でやり残したことっていっぱいあるんです。




俺は補佐っていう役割を勝ち取って、今ここにいるんです。

そして補佐になったからには先輩達を全力で支えないといけません。

先輩達が全国大会で優勝するまで、俺はここにいなきゃいけないんです。」




それが役目ですから。そう言って腕にはめたリストバンドをぎゅっと握り、部長に向かって困ったように笑いかけた。





「…その理由を作ったのは全部、幸村部長じゃないですか。」





それを聞いた部長は、何か考えるように海を見た後で膝を抱えた姿勢から座り直し、俺の肩に体重をかけた。


納得してくれたのだろうかと考えて、俺は押し返すように体重をかけ返してそれを支える。





「俺のせいでAはうちに残るの?」




「ふふ、そうですね。そういうことになりますね。」




そっか、と明るい声が上からかけられて、ふわりと頭を撫でられる。




「俺が、Aを捕まえているのか。」




今にも笑いだしそうな声でそう言った部長の、俺の頭に乗った手が耳の後ろを通ってするりと頬に落ちていく。




その手に導かれて見つめた幸村部長の青い目が、すっかり暗くなった空と同化している。





「それは…この上なく、光栄だな。」





目を細めて笑った部長は、額をつけるほどに顔を近づけてそう言った。






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木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» コメントありがとうございます!本当に合宿編は終盤です…最後まで楽しんで貰えたらなによりです! (2019年1月17日 22時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - ルドルフ可愛い...合宿が終わるの寂しいですね。更新頑張って下さい! (2019年1月12日 1時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» 久々の更新にも関わらず、コメントありがとうございます…!長い間ご迷惑をお掛けしましたが、今日から少しずつ更新できればと思います…! (2019年1月7日 23時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - 久しぶりの更新!いつも更新楽しみにしています!これからも頑張って下さい! (2019年1月7日 19時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - キャラメルさん» お返事が遅れてしまいすみません!コメントありがとうございます!そう言っていただけると書きがいがあります…!これからもよろしくお願いします! (2018年10月8日 17時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木こりのコロポ | 作成日時:2018年6月11日 21時

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