らいおんとおおかみ

おおかみ3 ページ18

夏の雨。
湿った空気。
天気予報は、はずれ。




ついさっきまで晴れていたはずの空は、雨粒を落としている。傘を持ってこなかった私は校舎の玄関口で途方にくれていると、


「じゃじゃーん」
ひょこっと現れたのは倫也先輩だった。空色の傘を片手に得意げな顔をして口角をあげている。

「じゃじゃーん、傘ー」

傘を高く持ち上げて、効果音は2回め。面白くて笑ってしまう。

「倫也先輩、部活は？今日は一緒に帰れないんじゃ」
「部活さ、雨降り出したし、もういいかなって。てか、俺もう3年だし、そんながっつり出なくてもいいんだわ」
「そう、なんですね？」
「ん。A、傘持ってきてないだろうなって思ったし。持ってきてないでしょ？」
「はい。当たりです」
「んはは。優しいでしょ、俺」

なんて言って、いつもの柔らかい笑顔。
優しい倫也先輩、狼になんて見えない。
犬みたいな時はあるけれど。ああ、でも狼って犬の祖先だったかな。


「相合傘だね」
ぽん、と倫也先輩が傘を開いて、その中に2人で入ると、首を傾げながらそう言うから、少し照れて、そうですね、と答える。
肩と肩が触れ合う距離。





「駅まで送る、そんで、この傘持ってっていーよ」
「でも、倫也先輩は？バス停まで濡れるよ？」
「俺はちょっとくらい濡れてもいーし」
「悪いですよ、てか、コンビニでもう一本買えば良いですね」
「あ、やだ。せっかく相合傘してんのにそゆこと言うかね？」

倫也先輩は困った顔をして私の発言を却下した。駅までの道を、のんびりと歩く。
雨の匂いと倫也先輩の香水の香りが混じって、私の鼻腔に心地よく届いた。

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