第37話 ページ39
なんだその
キャバクラみたいなノリ。
実際そういう場所に行ったことがないので
どういうものかは知らないが。
でも、せっかくの好意だ。
考えすぎて頭が爆発してしまう前に
久しぶりに食事をとるのもいいだろう。
インクは席から立ち上がり
私たちの方へ駆け寄ってくる。
エラーに見向きもせず、彼は私の手を掴んだ。
「さぁ、行こう？」
優しく微笑むものだから
私はされるがままに彼の後を着いていく。
エラーが手を伸ばしていたことを知らずに。
「(なに、してんだ、俺。
いま、触れようと、したのか？)」
インクが俺の名前を呼ぶ。
あいつの手を握ったまま不思議そうにこちらを見る。
その隣にいるあいつは少し恥ずかしそうにインクと
繋いでいる手を見ている。
なんだ、その顔……すげぇ腹立つ。
舌打ちをしながらインクたちについて行く。
＊
目の前に並べられたご馳走を
どれから食べようか迷っていると
インクが私を呼んだ。
「なに、インクっ！」
突然口の中に何かを入れられた。
味から察するにスパゲッティのようだ。
なにこれ、すごく美味しい！
「美味しい？」
口の中にまだ入っていたため、頷いた。
嬉しそうにこちらを見るインク。
なんか、こっちまで嬉しいような
気恥ずかしいような気持ちになる。
何とか咀嚼して飲み込んだ。
「これすごく美味しい。どこで取り寄せたの？」
「ん？これね、僕が作ったんだよ。」
頑張ったから褒めてーというように
にじり寄ってくる。今回くらいならいいか。
「ありがとう、インク。」
そういうとインクは固まってしまった。
あれ？もしかしてまた話してること忘れちゃった？
と思っていたら、急に頬が染った。
「ど、どうしたの？具合でも悪いの？」
「いや、えっと……なんでもないんだ。
だからその、あんまり見ないで欲しい、な。」
どうやら素直に褒められたことで照れているようだ。
普通に褒めただけなんだけど余程嬉しかったんだな。
「ふんっ。」
「エラーは食べないの？美味しいよ？」
「いらねぇよ。」
もう、意地っ張りだな。あ、そうだ。
スパゲッティを一口分とってエラーに話しかける。
けど彼は一向にこちらを向かない。
「こっち見てってば、エラー。」
「なんだ、よっ！」
思い切ってスパゲッティを彼の口の中に入れた。
よかった、タイミングずれたら
怒られるところだった。
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作者名：あゆさ | 作成日時：2020年12月2日 20時
