第百四十九話 ページ49
私はというと
竹刀を持って道場に向かった
少し、気を紛らわせなかったのかもしれない
道場の窓から月明かりが照らされる
その中で正座をし、瞳を閉じ、精神統一をする
静かで、薄暗くて、落ち着く
ふと、頭に過ぎるあの人の顔
私は彼が人に抱くものであろうとした
けれど実際そんな風になろうとはしなかった
私はあの人に会えればそれでいいと
それだけが望みであり、生きがいだった
私は未来ではなく、過去を生きる者だ
橘Aではなく……彼女になろうとした
実際のところ私も橘Aだという自覚がなかった
彼女自身だ、そう思っていた
あの人の次に浮かんだのがジキルとハイド
彼は本当に人間の極端な部分を表していると思う
ジキル……人間の善意、ハイド……人間の悪意
どちらも本当で、どちらも嘘だ
なんてそんな理屈みたいな話はどうでもいい
私は彼が好きだ
何時からか、なんてわからない
これは私だけの想いだ
つまり私は彼女自身ではなく
橘Aという存在だったのだ
自分の存在証明であり、自分だけの
思わず笑みが零れたと同時に不安が胸に押し寄せる
彼が私を好きだと言ってくれて嬉しかった
その手をとりたかった
【だけどダメなんだ】
私は完全な人間じゃないから
【貴方と生きられない】
貴方はサーヴァントだから
【ーーーああ、でも】
今だけは……と望んでしまう私
いけない想いを抱いてしまった
こんなにも痛くて、苦しくて
叶うことなどない願いを持つくらいなら
貴方と出会わなければ
…………それは違う
私が一番知ってるじゃないか
たった短い生命だとしても
私は彼と出会えてよかった
彼を好きになってよかった
だから私は今を大切にしたい
その時、後ろで床を踏む音がしたため
私は竹刀をとり、先を向ける
それは彼の首元で止まる
暗くて最初は誰かわからなかったが目が慣れてきた
そこに立っていたのは明くんだった
「……随分と警戒してたんだな
襲われるとでも思ったのか？」
『……ごめん。じっちゃんかと思って』
明くんはじっちゃんとは面識はないはずだが
彼は"ああ"と納得していた
もしかしたら私だけではなく
じっちゃんのことも調べていたのか？
彼はその質問に対して違うと答えた
遠目でじっちゃんを見て
只者ではないと悟ったようだ
『ところで、何か用事？』
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ゆき - いや当然ですよ！…スィ−ン一！ (2019年5月10日 19時) (
レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
まな★★(プロフ) - ゆきさん» そういって頂き、感激です！ (2019年5月8日 6時) (レス) id: 7988c73045 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - スマナイ、カミサクヒンダ、スマナイ！ (2019年5月7日 17時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
まな★★(プロフ) - ゆきさん» うーなんとも言えないです……ネタバレになっちゃうので、すまないw (2019年5月4日 18時) (レス) id: f47f4a70d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - エ、エリちゃんが… (2019年5月4日 8時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年4月8日 12時
