第八十八話 ページ38
「違和感、ですか……
そりゃそうですよ
人は自分が楽しいから笑うんです
愛想よく笑うのもあると思いますが
Aさんのはそれとは違うんです
本当に真っ直ぐな笑顔なんです
それで皆さん、戸惑ってしまうんですよ」
"説明下手ですいません"なんて彼は言ったが
……何故だかすごく嬉しかった
「でも駄目ですよ？
意識しちゃ……Aさんはもっと楽しむべきです」
まさか知り合ったばかりの彼に心配されるとは
ちょっとだけ気恥ずかしい
『尚人くんはこの病院に入院してるの？』
彼はちょっとだけ目を伏せた後
"そうです"と笑った
ちょっと寂しそうだった
「僕、心臓が悪くていつ死ぬかわからないんです」
心臓……重い病気なのか
少し、同情してしまった
…………こんな彼がバーサーカーのマスター？
彼がマスター殺しなんて企むだろうか？
ーーーーだけど人は欲には勝てない
でも、それでも私は尚人くんのことを
信じてみたいと思った
「すいません、重い話をしてしまって」
『ううん、私も話題ミスっちゃったから
他に何か話したいことある？』
"そうですね"と少しだけ考えてから
楽しそうに笑って学校のことを聞かれた
正直に言って学校で楽しかった思い出なんてない
というか、作らなかったというか
面白くない話かもしれないんだが
「いいんです。僕今まで学校に行った数が
少なくて……だから、雰囲気を少しでも
味わいたいんです」
ーーーーそういうことなら
私は今までの学校の暮らしを話した
勿論思い出は少なかったので
なんとか引っ張り出して
よくある行事や授業の話
尚人くんは全部頷きながら
飽きもせず話を聞いてくれた
『最近は友達、が出来たんだ』
「そうなんですか……あれ？もうこんな時間」
時計を見ると四時を指していた
あと一時間もすれば日が落ちてしまう
『ごめんね、長々と話して具合とか悪くない？』
「大丈夫ですよ。それに楽しかったですし
……あの、また明日来てくれませんか？」
ーーーそれは……
しばらく黙っていたが彼の瞳を見る
一瞬、揺れているような気がした
『……うん、いいよ』
そういうと尚人くんの顔が明るくなった
ニコッと笑い、"それじゃあ！また明日！"と
手を振って病院の中に戻って行った
ーーー後悔は、ない……
でも胸のあたりがズキズキ痛むのは
罪悪感からだろうな
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まな★★(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます！そのように思って頂けて嬉しいです！ (2019年4月4日 12時) (
レス) id: 5821fa07da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 橋さんの心の在り方に感動しました。私もこのように在りたいです。 (2019年4月4日 10時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年2月21日 10時
