NAGOYA-EP/ SC ページ35
【side:SC】
日本の空港は、いつ来ても静かだと思う。
音がないわけじゃない。アナウンスも人の足音もあるのに、不思議と耳に刺さらない。
フライト明けの重たい身体でタラップを降りながら、前を歩くはるなの背中を、なんとなく目で追っていた。
日本語を話すときの彼女は、少しだけ歩き方が変わることを知った。
肩の力が抜けて、足取りが軽い。
それが「帰ってきた人」の背中だってことは、言われなくてもわかる。
車の中で日本側のスタッフと話しているときの早口もそうだ。
韓国語で話す時より、言葉が滑っていく感じがする。
俺には全部は聞き取れないけど、「迷いがない」のはわかる。
(…やっぱり、日本は“ホーム”なんだろうな)
頼もしい。
正直、助かる。
でも同時に、胸のどこかが少しだけキュッとする。
——“守らなくても大丈夫な人”になっていく、みたいで。
ホテルのロビーで「おかえりなさい」と声をかけられた時、はるながほんの一瞬だけ、目を細めた。
誰にも気づかれないような小さな変化に、なぜか目が離せなくなる。
スングァンが「顔が柔らかくなるね」なんて言うから。
(だよな)と思いながら視線を何度も向けてしまう。
コンビニに行く途中もそうだ。
街灯の下で、彼女は一歩前を歩きながら俺たちと人通りとの距離を測っている。
日本では目立つ。知名度もある。
それを誰より分かっているのは多分彼女で、だからこそ半歩ずつ人から離れているのだろう。
自分がじゃなくて、“俺たちが”撮られないように。
(……仕事人間だよな)
感心する。
尊敬もしてる。
そして同時に、少しだけ悔しい。
店の前で立ち止まった時声を掛けようとして、やめた。
「しんどかったら言えよ」とか、「お前もちゃんと守られろ」とか、言いたいことはいくらでもあったのに。
その夜、エレベーター前で見た横顔は、どこか遠くに行きそうな人の顔のように見えた。
「……明日、リハーサル厳しめにやるから」
何でもないように言って、俺は自分の部屋の階を押した。
はるなは「わかりました。覚悟しときます」と微笑んで返してくれた。
でもあれは多分、彼女にじゃなくて自分に言い聞かせていたんだと思う。
——“俺も、まだここでリーダーやってるからな”
そうやって自分に言い訳でもしてないと、“守る役”から滑り落ちそうで。
怖かったんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Linaria(プロフ) - milkvetch179さん» きゃーー嬉しいですありがとうございます😍これからも楽しんでいただけるように頑張ります🎶 (11月15日 0時) (
レス) id: 5491e187e2 (このIDを非表示/違反報告)
milkvetch179(プロフ) - 待っていました!!!嬉しいです🥺💕 (11月13日 15時) (
レス) @page3 id: 50cdaa3150 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴち | 作成日時:2025年11月11日 20時


お気に入り作者に追加


