対話2 ページ42
[side:JH]
「…見られたくないですよ。泣いた顔、醜いから」
JH「違うよ」
息をひとつ吸って、言葉を落とすように囁いた。
JH「綺麗だと思う。泣いてる時のほうが、何倍も人間らしい」
スピーカーの向こうで沈黙が落ちる。
彼女の呼吸がほんの少し乱れる音がした。
「…ジョンハンさん、ずるいです。
そんなこと言われたら、泣くに泣けなくなります」
JH「泣いていいって言ってるんだよ」
JH「俺は見てない。聞いてるだけ。
…聞くのは、得意だから」
言いながら、自分の声のトーンを落とす。
柔らかく、包むように。
その数秒の間に、
静かに“しずく”が落ちる音が聞こえた。
(ああ、泣いてる)
声には出さない。
言えば、彼女がすぐ拭ってしまうのを知っているから。
彼女の“泣くことを許さない理性”を刺激したくなかった。
その代わりに、ただ静かに言葉を置いた。
JH「……泣き声って、優しい音だね」
「…ジョンハンさん、ほんとにずるい」
JH「よく言われる」
小さく笑いながらも、胸の奥では違う感情が波打っていた。
“この声で触れられたらいいのに。”
もし今、彼女の傍にいたら、きっと何も言わずに抱きしめていた。
泣き終わるまで、髪を撫でて、背中を温めて、「大丈夫」なんて言葉じゃなく、沈黙で、全身で、全部伝えたかった。
「……もう大丈夫です。今日はよく寝られそう」
JH「うん」
その“大丈夫”が嘘だと分かっていても、その嘘を壊したくなかった。
JH「もう寝ようか。明日、雪止むってさ」
「そうなんですね。……ジョンハンさん、ありがとうございます」
JH「お礼なんていらないよ。ただ……」
言いかけて、飲み込んだ。
“ただ、あなたが壊れていくのを見たくない”
“ただ、あなたを守りたい”
そのどれもが重すぎる言葉だった。
その代わりに、
JH「はるなが眠れるように、電話は切らない」
「え?」
JH「このままでいい。声聞かせて。寝息だけでも」
小さく笑う音がした。
「いやです…恥ずかしい」
JH「ダメ。通話切らないでね」
言い切ってしまえば彼女が折れるのは知っている。
沈黙の中彼女の息が次第に穏やかになり、静かな寝息に変わっていく。
それを確認してから目を閉じて、スマホを胸に置いた。
彼女が眠る音の中で、自分の心臓の鼓動がやけに大きく響いている。
触れられない距離。
でも、確かにそこにいる。
“君が眠るまで見届けられるなら、それでいい。”
そう思いながら、
俺もまた、ゆっくりと目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Linaria(プロフ) - てちさん» ご指摘ありがとうございます🙇🏻♀️🙇🏻♀️初書きなものでなんの知識もなく、、危うく消されるところでした💧ありがとうございます😭🫶🏻 (10月9日 23時) (
レス) id: 69dc979765 (このIDを非表示/違反報告)
Linaria(プロフ) - 赤福さん» 嬉しすぎます…!!😭ありがとうございます🎶 (10月9日 23時) (
レス) id: 69dc979765 (このIDを非表示/違反報告)
てち(プロフ) - オリフラがたったままになっています(T_T)大好きな作品なので、削除されてしまったら悲しいです…お気づきになった際にご対応をお願いします。 (10月9日 23時) (
レス) id: 787950b0c2 (このIDを非表示/違反報告)
赤福(プロフ) - 大好きなお話です!!やばい。。 (10月9日 21時) (
レス) @page42 id: a06298082d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴち | 作成日時:2025年9月29日 14時


お気に入り作者に追加


