lilac (ページ5)

今日:46 hit、昨日:73 hit、合計:205,071 hit

④ ページ5

○TAEYONG

〉今日の午後、時間があったらここに来て

朝そのメッセージを見た瞬間からそわそわしていて、何故か誰にもバレないようにエレベーターのボタンを押す。俺たちの宿舎の向かい側、新しく建てられたマンションはまだ新築みたいな匂いがして、エレベーターの鏡すらも輝いて見える。

言われた階に辿り着いて、インターホンを鳴らす。ガチャリとドアが開いて出て来たのは、愉快なサングラスを掛けたジャニだった。

「お、来た」

『…ジャニ？』

「これどう思う？」

『可愛い、とは、思うけど』

「ほら、やっぱり似合ってるって」

ジャニの後ろから歩いて来た人を見て、思わず息が止まってしまった。前よりも髪は短くて、身長は少し伸びて、それでも笑った顔はそのまま、綺麗なまま。

『……A？』

「お久しぶりです」

『ほ、ほんとに？本当にA？』

「本当にわたしで、新しい練習生」

昨日ドンヒョクが騒いでたんだってとジャニが言って、隣にぴったりとくっつく、その姿すらも懐かしかった。手を引かれてリビングまで歩いて行く合間に、なんだか涙が出て来そうだ。

『えっと、新しい練習生って』

「知らない間に噂だけ流れてて」

「先生が目を掛けている練習生は誰だってね」

「わたしは早く皆に会おうとしてたんですけど、まだダメで」

『ダメなの？』

「うん、でもオッパたちは良いよって」

『…そうだったんだ』

「あ、あともう1人」

インターホンが鳴る。ユタがキョロキョロと周りを見ながらその前に立っていて、Aが玄関まで走って行った。しばらくしてさっきの俺と同じように手を引かれて、Aが俺たちを見てにっこりと笑う。良いな、久しぶりに見た。心から嬉しそうな顔を。

「そういえばA、皆揃ったら何を言いたかったの？」

「ああ、そうだった」

「何？パーティーでもする？」

「ううん、それはまた今度」

『A？』

「来月から、お兄さんたちと一緒に練習するって」

Aの髪を撫でていたユタの手が止まる。Aだけが何でもないような顔をして、何故か俺たちだけが顔を合わせた。

『えっと、それって』

「わたしもまだ何も教えてもらってなくて、オッパも何も聞いてないですか？」

『……うん』

「先生が楽しそうだから、また何かありそうだけどね」